「DIC川村記念美術館」なぜ休館? モネにルノワール所蔵でも…「資産効率最優先」外資ファンドの“やり方”

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 千葉県のJR佐倉駅から車で揺られること約20分、突然、白亜の洋館が現れる。インキ製造の世界的大手「DIC」が運営するDIC川村記念美術館(以下・川村美術館)だ。売り上げが1兆円以上あるのに、知名度がイマイチの化学メーカーだが、女優の吉岡里帆を広告に起用している会社といえば分かりやすいかもしれない。

 収蔵作品は、クロード・モネの「睡蓮」やルノワールの「水浴する女」、他にはレンブラントやシャガールなど。現代美術もウォーホルはじめ名作ばかり。それもそのはず、これらはDICを創業した川村家が3代にわたって収集したものだからだ。ところが、その川村美術館が、来年1月下旬をもって休館すると発表したのは8月27日のこと。

「今年4月、DICの社外取締役らで設立された“価値共創委員会”が、運営コストなどを理由に規模を縮小し移転、もしくは運営中止を取締役会に助言しました。これを受けて、とりあえず休館という措置が取られたのです」(全国紙の経済部デスク)

 背景には3月に同社の株の8.56%を取得した香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」の存在がある。DICは、

「個別の株主様とのコミュニケーションに関しては、コメントを差し控えさせていただきます」(コーポレートコミュニケーション部)

 としているが、

「本業と関連の薄い資産は売却するべきだというのがオアシスのやり方です」(前出の経済部デスク)

パナや資生堂は大丈夫?

 痛いところを突かれたともいえるが、日本には上場企業が運営する美術館が他にもたくさんある。たとえば、パナソニックの「パナソニック汐留美術館」や、資生堂の「資生堂アートハウス」もそうだ。

 外資ファンドに狙われたらどうするのか、両社に聞いてみると、パナソニックは、社業の一つである照明や「建築・住まい」は美術と関わりが深いとしたうえで、

「過去に株主の方から美術館の運営中止などの要望があったかは確認できませんでした」(広報担当者)

 また、資生堂は、

「当社は芸術文化を重要な資産と捉えています。地域に対する貢献の意味も込めて(美術館を)運営しており、株主様から、売却せよとの要求は過去にもありません」(広報担当者)

 他の企業も対岸の火事と決め込んではいられまい。

週刊新潮 2024年9月12日号掲載

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