「金融所得課税」「解雇規制」をめぐって小泉、石破、河野が激論…自民総裁選を左右する“経済政策” 専門家が分析「日本経済を任せられるのは誰か」

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「金利のある世界」の必要性

 では各候補の政策を見ていこう。まずは世論調査で石破茂氏とともにトップを走り、総裁候補の本命ともされる小泉進次郎氏だ。

「実は小泉さんに関しては過去にマクロ経済政策に関する発言があまりなく、よくわからない、という印象を持っています」

 確かに、小泉氏の政治家としての経歴を見ると、青年局長、農林部会長、厚労部会長、環境大臣と、経済政策を所管する役職には就いたことがない。

「2017年に小泉さんは若手議員らと『こども保険』を提唱しました。幼児教育や保育の無償化を、年金保険料の上乗せで賄う、という考え方です。財源を確保するという点では、どちらかといえば財政規律重視、『小さな政府』寄りではないかと思います。父の小泉純一郎元総理も規制緩和に加えて、公共投資を削減するなど財政健全化を進めていました。金融政策についてどう考えているのか、現状では分かりません。マーケットの投資家たちも小泉さんの経済政策がやや不透明だと見ています」

 総裁選への出馬を表明した際には、解雇規制の見直しやライドシェアの全面解禁を提唱するなど、規制改革への意欲を示した。

「規制を改革して民間の活動を活発化させていく、という意味でやはり『小さな政府』寄りの考えを持っていることが明らかになりました。エネルギー政策などについては“あらゆる電源が選択肢”と語り、『年収の壁』の撤廃を提唱するなど、この辺りは現在の政府の方針に近いように感じました。財政規律や金融政策について、中長期的にどうするかは、示されておらず、今後の注目点となるでしょう」

 同じく世論調査では人気のある石破茂氏はどうか。

「担当大臣を務めるなど、地方創生政策をこれまで持論として進めており、人とカネを地方に移していく分配政策を重視しています。その意味では歳出を拡大する『大きな政府』を志向しています。コロナ禍の2020年に石破さんは一律10万円の現金給付について、一回では足りない、と語っており、元々財政出動に積極的だと見られます。ただ、最近は金利上昇に対応するためか、財政健全化を重視する発言が増えているように思います。金融政策については、このところ金利を上げることで円安を是正していくという考えが政界に広がっていますが、石破さんはその以前から、金利のある世界の必要性を語っており、金融政策に関しては正常化路線です」

小林鷹之氏と高市早苗氏の違い

 最近では石破氏が金融所得課税を強化すべきと表明し、話題になった。

「やはり石破さんの考え方は『分配』重視だということ。そう考えれば金融所得課税の強化を打ち出すのは不思議ではありません」

 経済政策でエッジが効いているのは河野太郎氏である。金銭解雇など、解雇規制の緩和を提唱し、波紋を呼んでいる。

「河野さんはマクロ経済政策に関してはアベノミクスとは真逆の立場だと思います。2017年、自民党の行政改革推進本部長として提言をまとめており、そこで、金融政策の出口戦略や財政健全化の重要性を打ち出しています。さらに、今年7月には円安をけん制する発言をしています。雇用に関する発言も、硬直的な人とモノがより流動的に動くように、規制を緩和していく考えの延長と捉えることができます。つまり、『小さな政府』かつ『金融政策正常化』を進める立場と言えます」

 若手のホープとして注目される小林鷹之氏は、

「もともと二階派で国土強靭化を意識しているのか、インフラ投資の重要性を訴えながら、長期的には財政規律の重要性も語っています。そのため同じ保守派の高市早苗さんら積極財政派とは違いがあります」

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