ロシア「GDP」は連続プラス成長、中国との「人民元決済」急上昇でドルの危機も…ウクライナ戦争、西側諸国の“大誤算”
BRICSの台頭は基調通貨ドルの危機
BRICSとは構成国であるブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字をつなげた名称だ。ロシアが中国とともに主導しているBRICSは今年からイラン、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアの4カ国が加わり9カ国体制となった(サウジアラビアは直前になって参加を見送った)。
その後も5月にタイ、7月にマレーシア、8月にアゼルバイジャンが加盟を申請した。北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコも9月3日、加盟に向けた手続きが進行中であることを明らかにしている。
「BRICS加盟の実利は低い」との指摘があるが、加盟申請ラッシュが続いている背景には西側諸国の求心力低下があると言わざるを得ない。
昨年8月のBRICS首脳会議において「脱ドル化」を協議した加盟国の間で、自国通貨による決済が増えていることも見逃せない点だ。特にロシアと中国の間で人民元決済の比率が急上昇しており、基軸通貨ドルの優位性が失われつつあるとの見方が出ている。
米ブルッキングス研究所は最近の報告書の中で、米国政府が気まぐれな制裁を続ければ、ドルは王座を奪われる可能性があるとの警告を発している。
11月に迫る米大統領選挙においても新たな争点となりつつある。トランプ前大統領は7日、政権に返り咲いた暁には、ドルから別の通貨にシフトする国々に100%の輸入関税を課すと主張した。BRICSの動きに対する警戒感が露わだ。
ウクライナ戦争で疲弊するドイツ
西側諸国にとってさらなる誤算は、欧州の雄ドイツの大スランプだ。
中国勢との競争激化でコスト削減が迫られていたドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は2日、国内工場の閉鎖を検討していると発表した。閉鎖に踏み切れば、1937年の同社設立以来で初めてとなる。
産業競争力の源だったロシアからの安価な天然ガス購入を断念したことで、ドイツのエネルギー価格は高騰し、「産業の空洞化」が進んでいた。VWの工場閉鎖は氷山の一角であり、ドイツの工業力衰退の実態が鮮明になったと受け止められている。
経済成長率が2年続けてマイナスになるとの予測も出ている。
VWの発表直前、旧東独2州の選挙でウクライナへの軍事支援の停止を求める極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が大勝した。経済のさらなる低迷はAfDへの支持率を高める効果をもたらすだろう。ドイツは第2次世界大戦のタブーを破り、ウクライナへ破格の支援を行ってきたが、継続できるかどうかわからなくなっているのだ。
米国はかつてベトナムの内戦に軍事介入し、国力を大きく毀損させた経緯がある。
ウクライナ侵攻は当初、ロシアにとって第2のアフガニスタン戦争になるとの見方があった。だが、現時点の状況からすれば、ウクライナ戦争は西側諸国、特にドイツにとっての「ベトナム戦争」になってしまったのではないだろうか。
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