「打撃2冠」を狙うヤクルト・村上宗隆の深刻過ぎる“不振” 日本人初「2年連続160三振」だけじゃない不安材料

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本塁打、打点、三振の「三冠王」

 僅差での優勝争いが続くセ・リーグの個人タイトルを見てみると、本塁打部門は東京ヤクルトの村上宗隆(24)が24本でトップ。巨人・岡本和真(28)、DeNA・オースティン(33)が1本差で追っている(記録はいずれも10日時点、以下同)。打点トップは巨人・岡本の68。村上は66でそれを追い掛けている。

 この数字だけを見ると、村上が最下位に沈むヤクルトにおいて一人で気を吐いているような雰囲気だが、実際は違う。打率は2割3分1厘、9月に入ってからの7試合は25打数2安打。三振は12をカウントしており、7日の阪神戦では日本選手初となる「2年連続160三振」も記録し、さらに8日の試合で2三振した。

「三振部門の2位は中日・細川成也(26)の139。3位が阪神・佐藤輝明(25)の115。162個と突出して多い村上の2年連続三振王は決定でしょう」(スポーツ紙記者)

「168個で最初の年間三冠王を獲得した23年以降は、精彩を欠いたまま」(ライバル球団スタッフ)との厳しい意見も聞かれた。今季は本塁打と打点に、三振を加えた“三冠王”になるかもしれない。

「相手バッテリーに裏をかかれ、2ストライク後の絶好球をアッサリ見送って三振を喫する場面もあれば、外角球を振り遅れて空振りするシーンも見受けられます」(前出・ライバル球団スタッフ)

 阪神との3連戦初戦を落とした6日、高津臣吾監督(55)は村上の不振について聞かれ、

「彼だけじゃないですけど、やっぱり、彼が打たないとね。なかなか、点につながらないですね」

 と、力なく答えていた。同日のスコアは1対9。ワンサイドゲームだったが、1点ビハインドで迎えた3回裏、走者を一人置いた場面で村上に打席がまわってきた。ホームランが出れば逆転、神宮球場のスタンドは主砲の一発に期待したが、三振に倒れている。

「その日の試合前、大松尚逸打撃チーフコーチ(42)が村上に付きっ切りになる場面がありました。高津監督は『自分は何も喋っていない』と言っていましたが」(前出・スポーツ紙記者)

 左肩が下がっている、バットが下から出ているなどの欠点も聞かれたが、首脳陣も技術面でのアドバイスは送っているはずだ。ホームラン王のタイトルを争っていることを指して一定の評価をする声もあるが、「打撃フォームが変わるのは技術面で劣っている」との厳しい意見も聞かれた。

「練習態度はマジメ。バットを振る量も他の選手より多いし、ウォーミングアップのランニングでも先頭に立って走ろうとします。普段から練習量が多いのに、不振に陥ったときはさらに練習量を増やす。それ以外のことができない選手で、気分転換が上手ではないんです」(チーム関係者)

2番を打ったことも

 その「気分転換」の意味を込めての配慮だろうか。高津監督は5日の巨人戦で村上に2番を打たせている。もっとも、通常の2番バッターに求められる右方向へのバッティングや進塁打、送りバントなどの指示は一切なく、全打席ともノーサインだった。ノーサインとは、「自由に打て、全部を任せた」の意味であり、4番バッターの特権とも言える。

「4番の村上が打てず、打線がつながらない切実な事情もあったと思います。『4番の重圧』からちょっとの間、解放してやろうという親心でしょう。でも、普通なら4番バッターの打順を変えるとしたら、5番や6番です。2番は驚きでした」(前出・スポーツ紙記者)

 1、2番を任された選手の出塁率がチームの得点に大きく影響してくるのは説明するまでもないだろう。5日の村上はノーヒットだったが、「2番・村上」は高津監督との絆でもあるようだ。

「厳密に言うと、『2番・村上』は今季初めてではありません。4月13日のDeNA戦でも起用されています」(前出・同)

 ペナントレースが開幕して12試合目だった。村上は一死満塁でまわってきた第4打席で右前適時打を放ち、チームの勝利に貢献しているが、実はこのヒットで記録された1点が今季初打点でもあった。シーズン開幕から53打席目で、だ。「打点がつかない」ということは不振以外の何者でもない。

 同試合後、村上が語ったところでは「2番」は野球人生で初めて。また、高津監督が00年に一軍指揮官に就任して以来、村上を4番から外した初めての一戦でもあった。そのことは当然、村上自身も分かっており、「結果を出さなければならない」という強い責任感を持って試合に臨んでいたはずだ。

「翌日も2番で起用されています。初回の第1打席でようやく今季一号アーチが生まれました。村上を4番から外す打順は大松コーチからの進言で、最終的には聞き入れましたが、高津監督は即答できなかったと聞いています」(前出・関係者)

 村上の調子が上がり、一時は3番・サンタナ(32)が打率リーグトップ、村上が同本塁打、5番・オスナ(31)が同打点トップとなり、「セ・リーグ最強打線」とも呼ばれるようになった。だが、5月には村上の打撃成績が再び低迷。以後、チームも最下位争いの厳しい状況が続いている。その5月の月間成績だが、打率は1割9分8厘。ただ、長打率では4割9分4厘と高い数値を残している。三振も24試合で28個、典型的なホームランか三振の一発屋状態だった。

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