台風10号「予報大外れ」の原因は? 気象庁に聞いてみた

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 死者7名、負傷者129名という被害を出した台風10号が、熱帯低気圧に変わったのは9月1日のこと。テレビをつければ、どのニュースや情報番組も「観測史上最多の雨量」や「記録的」を連呼して危機をあおり、事実、東海道新幹線は8月31日に三島―名古屋間を終日運休にしたほどだった。が、振り返れば台風の進路予想を“大外し”していたことは指摘しておかねばなるまい。

「国民全員が間違った予報を見せられた」

「8月22日にマリアナ諸島付近で発生した台風10号は当初、紀伊半島に上陸し、東海や関東も暴風域に入るとされていました。しかし、ご存じのように大きく西にそれて九州に上陸してしまう。台風情報はNHK、民放全局が気象庁のデータを使うことになっていますから、国民全員が間違った予報を見せられたことになります」(気象庁担当記者)

 そこで、気象庁に聞いてみる。

「まず、台風が大きく西にズレたのは、北東にあった太平洋高気圧が思っていたより強く張り出し、台風を西側に押してしまったこと。また、上空1万メートルにある“寒冷渦”が、下の台風を西方向に引っ張ったことが原因です」(天気相談所の担当者)

“大外れ”の原因は?

 それにしても、これほど予報を外してしまったのはどうしたことか。

「台風は気象衛星や海洋気象観測船からのデータ、また地上から上げるラジオゾンデ、そして欧州やアメリカの観測情報など、あらゆるデータをスパコンで計算して進行方向を予測します。が、できないこともある。例えば移動中の台風の真下(太平洋海上)からラジオゾンデを上げることです。気象衛星はあくまで外側から観測するものであって、台風の渦の中から得る情報には勝てません」(同)

 その昔、猛者たちが竜巻の真下に飛び込んで観測機器を打ち上げる「ツイスター」という映画があったが、それぐらいのことをしなければ正確な進路は分からないということか。

 気象予報士の森田正光氏が言うのだ。

「時速15キロ程度の遅い台風は進行方向の予測が現在でも困難なのです。いわゆる“迷走台風”で、南の海上では頻繁に発生する。今回、その迷走台風が太平洋の北側にあったことが予報を難しくしたということ。温暖化による海水温の上昇が影響しているのかもしれません」

週刊新潮 2024年9月12日号掲載

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