不倫3年で彼女がストーカー化、謎の「箱」が自宅に…家庭に“致命傷”を負わせたその中身

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あれから2年、妻は…

 それが彼女なりの決別の方法だったのだろう。もちろん、隆造さんの家庭はあっけなく崩壊しそうになった。

「妻にすべて白状させられました。でも奈美絵が妊娠したこと、僕が彼女を足蹴にしたことだけは言えなかった。あれは自分の中に、生まれ始めて芽生えた暴力性だったと言っても過言ではありません。僕、人に暴力をふるったことなんてないんですから」

 奈美絵さんのほうも妊娠したことは妻には伝えていない。それが彼女の最後のプライドだったのだろうか。隆造さんは、せめて子どもたちが大学を出るまでは、このままでお願いしますと妻に土下座した。妻は「わかった」と言ったが、それきり隆造さんとは必要最低限しか口をきかなくなった。

「あれから2年近くがたちます。妻は、話しかければ返事はするけど、心の内を見せなくなった。もう2度と許してもらえないのかなと尋ねたら、妻は『わからない』と一言。いっそもっと感情的になって怒鳴ったり泣きわめいたりしてくれればいいのに、本音が見えない。感情的にならないところが妻のいいところだと思っていたけど、有事の際にはそこがむしろネックでした」

 一方、勤務先が奈美絵さんの勤める会社と縁が切れていたため、彼女がどうしているのか、彼には知る術がなかった。

「でも去年だったかな、風の噂で結婚したとか。なんだか肩透かしを食らったような気がしました。結婚したことを、素直に祝福できない自分がいます」

 個人の心としては彼女のほうが傷ついただろうが、社会的家庭的には彼のほうが傷ついたと、彼自身は思っているようだ。もちろん、家庭があるのだからそんなことは最初からわかっていたはず。不倫をしたのは自分なのだ。夫を信じてきた智佳子さんの気持ちはどうなるのだろう。

「そうなんですよね……。わかっているけど、針のむしろみたいな家庭にいるのもつらいですよ」

 これからどうやって生きていけばいいのだろう。そして息子たちが大学を卒業したら、わが家はどうなるんだろう。隆造さんはそう言って、大きなため息をついた。

 ***

前編】では、奈美絵さんとの関係のはじまりについて紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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