「基本給は5万5000ドル、帝王切開は2500ドル」という知られざる代理母の値段票まで…増加が懸念される危険な「代理出産」

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 巷では目下、各地で起こされている訴訟の判決も後押しする格好で「同性婚」を容認するムードが醸成されつつある。そうした中、危険かつ倫理的な問題をはらむ「代理出産」の増加が懸念されているという。ノンフィクション・ライターの上條昌史氏が、その実情に迫る。(以下は「週刊新潮」2024年9月5日号掲載の内容です)

 同性婚を認めようという動きは、国内でじわじわと高まっている。そうした気運を押し上げたきっかけのひとつは、いうまでもなく司法の判断である。

 現在、同性婚をめぐる集団訴訟が全国5カ所(札幌・東京・名古屋・大阪・福岡)で起こされている。原告側の主張は、同性どうしの結婚を認めない民法などの規定は、婚姻の自由や法の下の平等を定めた憲法に違反するというもの。これまでの一、二審判決では、「違憲」が3件、「違憲状態」が3件、憲法に違反しない「合憲」が1件となっている。

 とりわけ注目されるのは、同訴訟で初の控訴審判決となった今年3月14日の札幌高裁の判決だ。憲法24条1項には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」と記されている。文字通りに解釈すれば、この条文は異性間の婚姻について定めており、同性婚は想定されていない。だが齋藤清文裁判長は、「両性」という文言は、その目的を考慮して解釈すべきだとし、同性間の婚姻も憲法で保障されているとした。ただし国への賠償請求は棄却したため、原告は上告、判断は最高裁に委ねられることになった。

 もうひとつ、世論の高まりも大きな要因である。2023年に朝日新聞や共同通信、JNNが行った調査では、同性婚に賛成する人の割合がいずれも約6~7割に達するなど、近年は軒並み、賛成派が反対派を上回る結果が出ているのだ。

代理出産の様々な問題

 一方、同性婚が認められることで代理出産が増加するのではないか、という危惧もある。

「同性婚が合法化されれば、男性カップルの代理出産が促進されます。これは他国の流れを見ても確実といっていいと思います」

 そう話すのは「代理出産を問い直す会」の代表である東京電機大学の柳原良江教授だ。女性カップルの場合、実子を持とうと思ったら精子提供を受けて出産することができるが、男性カップルは第三者から卵子の提供を受けて代理出産を利用するしかない。

「一般的に婚姻関係は、生殖や子育てとつなげて理解されるため、男性同士であれ婚姻関係にあるなら、彼らが子を持つことが潜在的に期待されるようになります。この考えのもと海外では、ゲイカップルの『子を持つ権利』が論じられるようになり、リベラル派が権力を持った時に代理出産の利用を認める制度が導入される事態が生じています」(同)

 代理出産には、人工授精を用いて代理母の卵子で妊娠する「人工授精型」と、依頼者あるいは第三者の卵子を用いる「体外受精型」の二つがある。うち、現在は代理母とは遺伝的につながらない後者が主流になっており、よく聞かれる「代理懐胎」も、こちらを指すものである。

 だが、代理出産には数々の問題がある。まず、代理母には一般的な妊娠出産によるリスクに加えて、第三者の卵子に由来する胚による妊娠特有のリスクが生じる。胚が無事に着床するように高用量の薬剤が投与されるため、副作用がひどく大量出血が起きやすい。早産や低出生体重児のリスクも増え、多くの依頼者が望んでいることから、実質的に帝王切開が強制となりうる。また多胎妊娠を望む人も多いため、それに伴うリスクも存在する。

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