【虎に翼】昨年2月に伊藤沙莉は“予言”していた まもなく最終回で「寅子ロス」の声

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

 NHKの朝ドラ「虎に翼」は、大好評のまま主人公・佐田寅子を演じる伊藤沙莉がクランクアップした。放送もいよいよ今月いっぱい。早くも“寅子ロス”の声が出始めている。

「原爆訴訟」の判決公判の場面は最大のヤマ場だった。中年期に差しかかり、人間として円熟味を増す寅子が「裁く側」として苦悩する姿を見せた。ドラマを通して徹底しているのは、裁判官もまた機械ではなく人間であるというメッセージだ。家族や健康など、個人として悩みを抱える存在であり、そこに「共感」を寄せる弱者へのまなざしがあった。【水島宏明 ジャーナリスト/上智大学文学部新聞学科教授】

 ***

 伊藤沙莉は、昨年2月の「虎に翼」制作発表会見の場でこう語っていた。

「道を拓く人はたくさんの苦労、努力、たくさんのことと闘ってきた人だと思うので、そういう強さも弱さも含め、人間らしくその方を表現できたらいいな。人間味のある人間をちゃんと描きたい」

 彼女の言葉は、果たして実現されたのかを見ていきたい。

女性ゆえの“痛み”や“困難”

「虎に翼」は、女性初の裁判官・三淵嘉子がモデルという史実に沿って描かれる一方で、「女性ゆえ」の困難がこれまでの朝ドラではなかったほどリアルに詳しく描かれた点が特長だった。

 寅子の女学生時代に「重い生理痛」の描写がたびたびあったのはそのひとつ。布団から起き上がれず勉強に身が入らない日もあった。エリート裁判官と子連れ再婚し中年期に入った時は、顔がほてってしきりに団扇であおぐ場面など、更年期障害を強調する描写も目立っている。

「生理痛」も「更年期障害」も、個人差があるものの、女性が働く上で大きな障害になっている。NHKも「あさイチ」や「クローズアップ現代」などで、女性の“働きづらさ”の問題にたびたび光を当ててきた。「虎に翼」は、そうした女性をめぐる困難を意識的にクローズアップしている。

 加えて、認知症の家族を抱える負担も描かれた。再婚して家族となった義母の星百合(余貴美子)は認知症が次第に進み、出勤しようとした孫娘の星のどか(尾崎真花)をまだ大学生だと勘違いし、厳しく注意する場面があった。さらに深夜にもかかわらず買い物に出かけようとして家族を振り回すことも。寅子は、百合の見守り役を兼ねて家政婦を雇い、夫の星航一(岡田将生)とともに、義母が笑顔でいられる時間をできるだけ作ろうと努める。

次ページ:原爆訴訟の描写でも際立った「女性」被爆者へのまなざし

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。