9月26日に「袴田事件」再審判決 釈放を決めた元裁判官は「冤罪救済に時間がかかり過ぎる」「人権問題を超えて人道問題」

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巖さんを釈放した当時の裁判官

 巖さんを釈放した村山浩昭氏のインタビューは、シンポジウムの3日後に行った。村山氏は2021年12月に退官した後、「無罪請負人」の異名を取る弁護士・弘中惇一郎氏(78)の法律事務所に入所。東京五輪の贈収賄事件で逮捕されたKADOKAWAの元会長・角川歴彦氏(81)の人質司法を世に訴える訴訟活動も始めている。

――15回の再審裁判のご感想は?

 裁判所は、プランに従って粛々と進めたと思います。傍聴したわけではなく報道の限りですが、予定していた審理、証拠調べはきちんと終わったのでは。検察の立証も必要な範囲で行いましたし、弁護団のほうも圧縮した形でも立証した。期間は短かったですが濃密な審理がなされたと受け止めています。

――再審は「5点の衣類」の血痕の色調変化が課題ですが、他の面も審理していました。

 賛否あると思います。「散々やってきてまたやるのか」とか「請求審で言われなかったことまで引っ張り出してひっくり返すのか」などの異論。でも、現在の再審制度の理解では許される範囲です。

 むしろ私は、請求審で何度もやり直すことがおかしいと思います。検察官の抗告を禁止すれば、全体として冤罪救済の期間がうんと短縮される。日本の再審は冤罪救済が唯一の目的であり、不利益再審(無罪判決を受けた被告人について検察が再審を申し立てること)はないですから。

「高齢」が大きなウェイトを占めるのでは

――昔(戦前)は不利益再審がありましたね。

 そうです。今はありません。その制度設計からすれば、期間短縮は冤罪救済のメリットです。救済を早くしなくてはならない。

――「袴田巖さんも姉も高齢だから早く無罪判決を」の反面、「再審で証拠捏造を徹底的にあぶり出してほしい」という思いもありました。

 証拠の捏造についてどこまで裁判所が突っ込むかですが、捏造かどうかを直接審理することはできません。5点の衣類の証明力、発見された経過についての理解がポイント。捏造だからといって特別な審理が行われることにはならない。「あれは捏造でした」という警察官が現れれば別ですが、あり得ないでしょう。

 今回は(再審を)一審で終わらせなくてはならない。制度上、検察は控訴も上告もできる。それは絶対に避けなくてはならない。ご高齢ということが相当大きなウェイトを占めると思います。

――控訴云々は判決内容に左右されるのでしょうか。捏造のことを強調しているとか。

 一般論としては、検察としては捏造とされれば聞き捨てならない。反論はするでしょうが、現実にどうするか。昨年の東京高裁の決定も捏造の疑いは指摘していた。その時、検察は特別抗告をするだろうといわれましたがしなかった(註:不服がある場合、検察は5日以内に最高裁判所に特別抗告できる。この時は特別抗告が行われなかったため、静岡地裁で再審となった)。

 抗告断念した検察は再審で有罪立証しました。私は有罪立証すると思いました。方針は最初決まらなかったようで、部内で協議していた。抗告断念することと有罪立証することは必ずしも矛盾しません。

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