「転倒は要介護の引き金に」 高齢者のQOLを下げる「転倒」を防ぐために…簡単にできる「ながらトレーニング」

ドクター新潮 ライフ

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ついでにトレーニングをする

 そこで、私が実践しているのが「ながらトレーニング」です。「筋トレをしよう」と決意し、その時間はそれだけに集中しなければならないと考えると、どうしたって尻込みしてしまいます。ですから、何かをしながら、ついでにちょこっとトレーニングをしようというものです。

 例えば、私は通勤中、エスカレーターに乗っている間に、上下に人がいないことを確認した上で、段を二つ利用させてもらってアキレス腱を伸ばすようにしています。

 アキレス腱はバランス能力に大きく関与します。そしてバランス能力を鍛えることは、CDC(米国疾病管理予防センター)が「What You Can Do to Prevent Falls(転倒を防ぐためにできること)」というパンフレットで紹介している、転倒予防に欠かせない重要な要素のひとつなのです。

「つり革につかまる」もよい運動に

 また電車内でも、混んでいなければ、つり革につかまりながら腕から脇にかけての筋肉を伸ばしたりしています。「転ばないために」というと下半身の筋肉をイメージするかもしれませんが、体の筋肉は連動していますから、上半身の筋肉の柔軟性を含めたトータルな姿勢の良さも、転ばないためのバランス能力維持には大切なのです。

 みなさん、ご自身の生活を振り返ってみて、腕を頭よりも上に上げたシーンを思い出せますか? 昔は洗濯物を干す時などにそういう機会がありましたが、乾燥機を使う人が少なくないいまは、頭よりも上に腕を上げることって案外ないんですよね。ですから、通勤時などにつり革につかまるのはよい運動になるのです。

 こうしたストレッチの他には、ソファに座りながらテレビを観ていて、その姿勢から立ち上がる際に、わざとゆっくり腰を上げて負荷をかけるといった、ちょっとした筋トレをするようにもしています。

 このように、移動しながら、あるいはテレビを観ながらのトレーニングが、私たちにとって現実的に可能で有効な転倒防止トレーニングとしてお勧めできます。

 何かをしながら、といっても、ふたつの動作を一緒に行っているわけではない点に留意してください。エスカレーターでのアキレス腱伸ばしでいうと、移動しながらとはいえ、移動自体は自動なので、自分がやっていることはアキレス腱伸ばしだけです。

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