「フード付きパーカーとタートルネックはNGです」 平均年齢31.8歳「美容師」業界の知られざる苦労話 「客にお願いしたいこと第1位」は納得のひと言

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コロナ禍の変化

 第1回目の「レジ係」同様、美容師も接客業だ。

 人との接触が最小限に抑えられたコロナ禍では、リモートワークや外出自粛が定着。当時は美容院も感染防止対策で大変だったという。

「感染防止対策は大変でした。お客様にもマスクは着用してもらっていましたが、カットの時にヒモが邪魔になってしまうので、耳を掛けるところを一度ねじってバッテンにしてもらったり。あと、紙の雑誌が各店舗一気にタブレットに変わったのもこの時期ですね」

 売上も大分落ちたのでは、と問うてみたのだが、こちらは「一概にそういうわけでもなかった」という声が少なくなかった。

「やはり当時、お客様の来店頻度は全体的に減りました。が、家でできることとして『自分磨き』をする人が増加。普段対面だとできない髪型を試したり、気分転換に明るい髪色にしたりと、『新しいヘアスタイルを試せるいい機会』ということで、うちはお客様1人の単価が上がりました。なのでコロナが“大打撃”とは感じませんでしたね」

「髪の内側と外側の色を変える、いわゆる“インナーカラー”が流行り始めたころもコロナ禍。こうした世相から流行が生まれるんだなと感じました」

 一部の経営者は「コロナ禍よりも大変なのはむしろ今」と話す。

「コロナ禍では、『しばらく美容院に行かなくてもいいヘアスタイル』も編み出され定着。今でもお客様のご来店頻度が減った印象があります。また、当時は美容院専売シャンプーやカラー剤が次々に発売されたんですが、それが一部客足が戻らない原因になっているような。そこに円安や賃上げが重なり、カラー剤や人件費が負担に。コロナ禍より今が辛い」

690円カットにサロンが思うこと

 こうして多くの美容院が苦境に立たされるなか、昨今「690円でカットしてくれる美容院」が日本に拡大しているという。先日もネットニュースで大きな話題になっていたが、

「サクッと髪を切りに行けるのは便利」

「値上げラッシュの時代にすごく助かっているのでよく行っている」

 という声のほかに、

「技術を安売りするべきではない」

「サービスがバリカンで坊主とかならば分かるが、ハサミを使って時間もかけてカットしているのに690円はデフレを助長してしまう」

 という声が相次いだ。

 そんな激安店舗の台頭に対し、他サロン経営者や美容師たちはどう思っているのか聞いたところ、意外にも危機感はないという。

「安く提供する店舗にはそれなりの客層が集まる。店の価格が二極化することは、つまり客質も二極化する」

「私は安いカット屋さんを否定しません。気になるところだけカットする、『安くて早い』に価値を求めるお客様にとってはいいサービスだと思います。安いカット屋さんとその対極にある一般~高単価の美容室双方の価値が上がっていいのでは。上手に使えばいいサービス。自身の顧客様にもお薦めしたりします」

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