「28年経っても涙が出ます…」 未解決「上智大生殺害事件」 被害者の親友が胸に抱き続けた思い

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今年の法要でも再会

 事件発生の翌年から命日がある9月に法要が執り行われ、エリさんが参列者の取りまとめを行ってきた。法要では食事会が開かれ、皆、私服を着て、同窓会さながらの和やかな雰囲気だ。カナさんの発案で「順子基金」も設立され、犯人逮捕につながる有力情報の懸賞金に上乗せしてもらおうと、同級生たちから集まった「気持ち」を遺族に届け続けてきた。「私たちにも何かできることを」という思いからだ。エリさんがしみじみ語る。

「あれから28年、思い返せば早いですね。犯人は今も生きているのだろうか。30年近くも経てば、どんな人でも色々なことが起こり得ますから。もしこの世にいないのであれば、犯人のことを知っている周辺人物は通報してほしい。そうなっていない現状には憤りを感じます」

 順子さんの友人なら誰だって、犯人が逮捕され、司法の裁きを受けてほしいと切に願っている。しかし、28年未解決という厳しい現実が、エリさんに複雑な心境を抱かせていた。

 そして今年もまた法要の日、仲良し3人組は再会する。

水谷竹秀(みずたにたけひで)
ノンフィクション・ライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、『日本を捨てた男たち』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。最新刊は『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)。10年超のフィリピン滞在歴をもとに「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材。2022年3月下旬から2ヵ月弱、ウクライナに滞在していた。

デイリー新潮編集部

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