中日のドラフト戦略が迷走? 今年のドラフトで再びショート指名の可能性 球団関係者は「立浪監督続投なら全くないとは言い切れない」
プロ野球のペナントレースも終盤戦に入り、来シーズンに向けた話題が増えてくる時期となった。中でも注目度の高いイベントといえば、10月24日に開催されるドラフト会議だ。各球団のスカウト陣は、候補選手をリスト化して、絞り込み作業を本格化させていく。全国のドラフト候補をチェックしている筆者は先日、ある球界OBから、こんな質問を受けた。【西尾典文/野球ライター】
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明治大のショートを松永スカウト部長が高評価
「中日ドラゴンズは、今年もショートを指名するんですかね……」
この質問が出たのには、理由がある。中日は、一昨年と昨年のドラフトでショートの選手を6人も獲得している。2022年は、2位の村松開人(明治大出身)、5位の浜将乃介(NOL・福井出身)、6位の田中幹也(亜細亜大出身)、育成3位の樋口正修(BCリーグ・埼玉出身)。昨年は、2位の津田啓史(三菱重工East出身)、3位の辻本倫太郎(仙台大出身)を指名した。ちなみに浜は入団後、外野手に転向したので、現在は5人となっている。
それにもかかわらず、中日が今年のドラフトでも、再びショートの獲得に乗り出すような報道が出た。6月13日配信の中日スポーツでは、全日本大学野球選手権の後に開かれた中日のスカウト会議で、九州産業大のショート、浦田俊輔を高評価していると報じられた。さらに、9月2日配信の同紙によると、明治大のショート、宗山塁についても、松永幸男スカウト部長のコメントが掲載され、高い評価を与えているという。
過去2年間で指名された選手は、大学、社会人、独立リーグの出身で、高校生は1人もいない。そこに加えて、さらに大学生のショートをドラフトで指名すれば、同じポジションに年齢の近い選手が重なることになる。浜は外野、田中はセカンドを守っているとはいえ、基本的には全員がチャンスメーカータイプであり、チーム編成に“偏り”が出るのは明らかだ。
もちろん、これらの報道がドラフト指名に直結するものではない。しかしながら、今年のドラフトでは、“大学生のショートは対象外”と考えていたファンや関係者も多かったのではないか。そんななかで、中日スポーツの報道が出たことで、冒頭で触れた球界OBの質問につながった。
立浪監督は来季も続投するのか
実際に大学生のショートを指名する可能性は低いと推察されるが、「全くないと言い切れない事情」があるのも事実だ。その理由は、立浪和義監督の存在だ。中日の球団関係者はこう話す。
「過去2年間の指名は、立浪監督の意向が強く反映されたものだと言われています。就任前までレギュラーだった京田陽太をトレードに出してまで、何とか新しいショートを確立したいという思いが強かったようで、それだけ立浪監督が重視しているポジションであることは間違いないでしょう。ただ、今年も、2年目の村松が主に務めていますが、大学時代から怪我が多く、1年間任せるには心許ない。さらにルーキーの津田、辻本も二軍で結果を残せていない。であるならば、今年のドラフトで宗山や浦田を指名しようという話になってもおかしくありません」
一昨年のドラフト会議の前は、立浪監督は直々に多くの選手を見て回った。この年に1位で指名した右腕の仲地礼亜(沖縄大出身)は、立浪監督のみならず、落合英二コーチと大塚晶文コーチも現地で視察している。昨年は、このような動きはなかったものの、1位で指名して抽選で外した度会隆輝(ENEOS→DeNA)については、立浪監督が高く評価していたほか、津田、辻本のショート2人の指名についても、監督の意向が反映されていたという。
今季の中日は、ヤクルトと最下位争いを展開しており、Aクラスは絶望的な状況だ。一昨年、去年と2年連続の最下位に沈み、今季も低迷している立浪監督が、来季も続投するのか、不透明な状況だが、前出の球団関係者は「現時点で、後任の話が出ていないので、続投も十分あり得ます」と語っている。
前半戦終了時点でのオーナー報告でも、大島宇一郎代表取締役兼オーナーから戦いぶりについて評価するコメントが聞かれた。8月29日には今季の観客動員数が200万人を突破するなど、立浪監督の就任以来、動員数は高水準をキープしている。観客動員数は増える一方で、チームが低迷しているため、選手の年俸は低く抑えられる。球団経営にとって、立浪監督は“最良な監督”なのかもしれない。
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