外国人に安く買いたたかれる日本 高まる“宿泊需要”には「空き家問題」で対応したらいかがでしょう(中川淳一郎)

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 8月に1カ月「サブスク」の部屋を東京・渋谷に借りました。「定額で一定期間使い放題のサブスクリプション」のことですが、部屋でいえば「マンスリーマンション」を現代風に言い換えたようなものですね。渋谷駅から徒歩5分で14万円。これがことのほか良かった。さらに、翌月も契約すればその月は5万円になるそうです。

 今回この部屋を契約したのは、東京で仕事を多数持つフリーライターである私の妻です。2020年に佐賀県唐津市に拠点を移し、仕事を続けていたのですが、コロナバカ騒動が終わりを迎え、書籍ゴーストライターの仕事では著者から「対面で」とお願いされるようになったのです。

 これまでは「コロナが怖いからね」とリモートの取材でOKだったのですが、世の中も「接触」を重視する方向に。「3密」とかはどうでもよくなりつつあるのです。そうしたことにより唐津からの交通費とホテル代を考えると、仕事が集中した8月はサブスクの部屋を借りた方がいい、との結論になりました。

 このサブスク部屋、良いですね。1日あたり4500円ほどで家具が付いてベッドもある部屋に泊まれる。この形態、今後はやるのではないでしょうか。ということで、宣伝するわけではないのですが、私も唐津で同様のビジネスを開始することになりました。

 今、日本はあまりにも安過ぎる価格のためインバウンド需要がすさまじいことになっています。渋谷の街を歩いていても、中国人と韓国人と白人だらけです。日本人は6割ぐらいしかいないのではないか。

 それだけ安く買いたたかれているわが国ですが、今後も人気観光地の「宿泊需要」は増加の一途をたどるのでは、と考えます。そして私のビジネスの話に戻りますが、3Kの部屋を借り、そこを知り合い限定で泊まらせるサービスを開始します。

 とにかく唐津という街は宿泊施設が少な過ぎる。しかも、九州電力玄海原発の作業員が大量に部屋を押さえているため、宿代も上がるし、ユネスコ無形文化遺産・唐津くんちの時など部屋はまったく取れない状況です。

 だからこそ、少なくとも知人には部屋を提供したい、と宿泊ビジネスを立ち上げるに至りました。正直1年やっても儲けはゼロでしょう。あくまでも知人が唐津に来てくれることだけを考えている。

 ただ、この件を経験したうえで考えたいのは日本全国に広がる「空き家問題」です。キチンと整備をすれば宿泊施設として使えるようになるのでは。今後日本が発展することは見込めず、「インフラが整いメシもうまいしホスピタリティーはあるし、価格が安い」という状況が続くでしょう。

 渋谷の街を歩いていると、本国では貧乏なんだろうなと思うような外国人バックパッカーが闊歩し、彼らは「オー、ジャパンはブッカがヤスイネ!」と感動している様を見せるのです。

 というわけで宿泊需要を見越し、しばらく部屋の運営をしてみようと思います。儲けようと思ったら外国人相手にするでしょうが、それはしないつもりでいます。外国人を対象にした時点で日本を見限ったことになります。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2024年9月5日号掲載

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