メジャー新記録でも大谷翔平「MVP獲得」に相次ぐ反論…「MLBでDHは低評価」「ピッチクロックで走者が有利に」
けん制の回数制限
この「盗塁ができる強打者」という観点では、もともとMLBには「30-30クラブ」という言葉があった。1シーズンでホームラン30本、盗塁30が「パワーとスピードを兼ね備えた選手」として高く評価されてきた。そこに大谷が「43-43」という並外れた記録でクラブの一員になったわけだ。
「ところがMLBは昨年にピッチクロックを導入したほか、けん制の回数にも制限を設けました。3投目でアウトにしなければボークとなり、走者は進塁してしまいます。つまり1人の打者に対し、投げられるけん制は実質的に2球となったわけです。これを受けてアメリカだけでなく日本でも『けん制の制限がなかった時代に「30-30」を達成した選手と、今季の大谷を同列に扱うわけにはいかない』という指摘が散見されます」(前出の記者)
ショーウォルター氏の「DHの記録は割り引くべき」という指摘に「一理はあります」と半分は同意した友成氏は、「以前に達成した『30-30』のほうが記録として優れている」という見解には、異議があるという。
「『30-30』を達成した過去の選手を見ると、ステロイド系の筋肉増強剤を使っていたことを認めたり、疑惑が指摘されたりした選手がいます。禁止されていなかったこともあり、かつてMLBでは筋肉増強剤が蔓延していました。そのため大谷選手の『43-43』を『筋肉増強剤と完全に無縁の選手が達成した久しぶりの大記録』という観点からも高く評価することができるのです」
90%を超える盗塁成功率
さらに大谷の盗塁成功率が昨季に比べ、今季は大幅に上昇したことも評価すべきだという。
「昨季の大谷選手は盗塁の成功率が77%にとどまっていました。ところが今季はキャンプの時から盗塁の練習に力を入れていました。私はケガが心配で盗塁を狙う姿勢には反対していたのですが、何と今季の成功率は90%を超えています。先に紹介したWARも盗塁が成功すると数値が上がります。大谷選手は打撃だけでなく盗塁でもチームの勝利に最大限の貢献を果たしていることは明らかです」(同・友成氏)
これまでアメリカで繰り広げられている議論の中から、「大谷よりMVPにふさわしい選手がいる」と“異論”のほうをご覧いただいた。では最後に「大谷こそMVP」という意見を見てみよう。
「スポーツ専門チャンネル『ESPN』が先日、野球担当の記者18人でMVPの予想投票を行いました。大谷選手がMVPを獲得すると予想した記者は18人中18人、つまり満票だったのです。ちなみに『大谷選手は「50-50」を達成できるか?』という予想投票も行われており、こちらは18人中16人の記者が『達成できると思う』と票を投じました。やはり大谷選手がMVPの最有力候補と目されているのは間違いないのです」(同・友成氏)
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