メジャー新記録でも大谷翔平「MVP獲得」に相次ぐ反論…「MLBでDHは低評価」「ピッチクロックで走者が有利に」

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 第1回【メジャー史を塗り替える「43−43」達成でも、大谷翔平は「MVP当確」ではないのか…MLB屈指の名監督と“バッティングの師匠”が異論を述べるワケ】からの続き──。シーズン終盤戦を迎え、アメリカのメジャーリーグ(MLB)ドジャースの大谷翔平は勢いを増すばかり。MLB史上初となる「43-43」(シーズン43本塁打・43盗塁)を達成したかと思えば、9月5日の時点で「44-46」まで記録を伸ばしている。(全2回の第2回)

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 多くの日本人が「ナ・リーグMVPは確実」と考えるところだろう。だが、現地の雰囲気は少し異なるようだ。実際、メジャー屈指の名監督として知られるアメリカのバック・ショーウォルター氏は、「MVPはリンドアで決まり」と、大谷のライバル選手の名前を挙げている。

 メジャー研究家の友成那智氏は「アメリカで『誰がナ・リーグのMVPを取るか』という点で議論が盛り上がっているのは、とてもいいことだと思います」と言う。

「ショーウォルター氏の指摘も確かに一理はあります。とはいえ、彼はメッツの監督時代、リンドア選手を非常に可愛がりました。ひいきという面は否定できないと思います。この問題を考える際に重要なのは、『WAR(Wins Above Replacement)』という評価基準です。2つのバージョンで知られ、野球WEBサイト『FanGraphs』の数字はMVP選考に大きな影響を与えています」(同・友成氏)

 WARとは「ある選手が平均以下の選手に比べて、どれだけチームの勝利に貢献したか」を数値化したものだ。ちなみに「平均以下の選手」も厳密に定義されており、「FA市場において最低年俸水準で獲得できる選手、またはトレードにおいて最小限の損失で獲得できる選手」なのだそうだ。

DHが評価されない理由

「WARは投手も野手も対象となっていますが、野手の場合はポジションによって数値を補正します。『FanGraphs』の場合、最大値はキャッチャーのプラス12・5で、次がショートの7・5です。どちらも非常に難易度の高い、専門性の高いポジションですから、守備でチームに貢献しているという点を重視して補正するわけです。特に巧打攻守というタイプのショートはMVP候補として、よく名前が挙がる傾向があります。そしてDHはマイナス17・5になっています。アメリカでは『野手の評価は10点満点で、打撃は7、守備が2・5、走力が0・5』という考えが一般的です。つまり大谷選手の人気や実力とは関係なく、打つだけで守らないDHは、もともとアメリカでは評価されない傾向があるのです」(同・友成氏)

 そもそもDHは1973年に初めてMLBで採用された。アメリカが発祥の地であるにもかかわらず、なぜ現地でDHは低評価なのだろうか。

「MLBと日本のプロ野球(NPB)を比較すると、1試合における平均得点が相当に違います。特にNPBは近年“投高打低”が顕著で昨年は3・48点でした。一方、昨年のMLBは9・2点。日本の野球ファンはMLBもNPBも共に楽しむ人が多いでしょう。しかも同じ日本人として、ややNPBに引っ張られながら観戦している。つまり1試合3点台の試合に慣れた上でMLBの強打を見ると、素直に感嘆してしまうのではないでしょうか。そのため日本人はDHを評価しますが、アメリカ人にとって強打者は当たり前の存在ですから、DHより『打って守れて』という選手に惹かれるのだと思います」(同・友成氏)

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