「五輪より価値ある…」VIP席12.5万円でも完売の超高額「ヴィジュアル系」ライブ “信者”が集う理由は場所にアリ

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“聖地”でのジョイント

 さらに、ヴィジュアル系の事情に詳しい音楽業界関係者は、今回の公演の“開催場所”に注目する。

「彼らはヴィジュアル系のバンドが全盛期だった95年後半から00年代前半にかけて2大カリスマとしてシーンをけん引してきたわけですが、当時、東京・JR原宿駅近くの神宮橋が“聖地”とされていました。双方のファンが、思い思いのコスチュームを着て集ったのです。2つのバンドのファンが同じ場所に集ったことで、いつの間にか“2つの宗教(バンド)の信者(ファン)による抗争”と言われるようにもなりました。もちろん、実際に乱闘のように争ったわけではないのですが、ファンの間では“神宮橋の宗教戦争”と、今でも懐かしく語り継がれています。今回のイベントの会場は代々木第一体育館の公演と、いわば“聖地”にごく近い場所でのジョイントになるのです」

 現在のようにSNSも普及していない時代、バンド好きにとって仲間づくりや情報交換の場所が「神宮橋」で、いわば「ファン同士のコミュニケーションの場」だったわけだ。

「7年前のジョイントライブが発表された時には、Google Map上の『神宮橋』に、『アクロの丘』(DIR EN GREYの曲名)と『メギドの丘』(PIERROT曲名)が地名として表示されたこともありました(現在は消去)。ファンによるいたずらですが、彼女らにとって『丘』というのは『待つ』という意味。このことからも、神宮橋が特別な場所であることがわかりますよね」

 今回の高額チケット公演の会場設定には、ファンのモチベーションを高めるための、巧みな仕掛けが加えられているのである。

「五輪や外タレなんかの金額よりも…」

 公演をプロデュースするのは、ダイナマイト・トミー。ヴィジュアル系ロックの先駆けとして知られた「COLOR」のカリスマ・ボーカルで、当時は「東のX、西のCOLOR」と、YOSHIKIと並べられて語られる存在だった。現在はDIR EN GREYのプロデューサーとして知られる。

 トミーに今回のライブについて尋ねると、開口一番「タイミングかな」との返事が返ってきた。

「祭りだって思ってくれたらいいんじゃないの、7年ぶりの……。長野の諏訪大社だっけ、御柱(おんばしら)祭ってあるじゃない。急斜面を巨木(御柱)にまたがって滑り降りる、あの凄い祭り。それって7年ごと(※正確には満6年間隔、慣例として「数えで7年」等と言われている)に行われ、その都度、柱を更新するんでしょ。それと同じかな」

 さらに、高額なチケット代については、

「両バンドともずっと心に残るようなステージを見せてくれるのだろうし、それを強烈に感じられる場所には価値があると思うけどね。またビッグカードですし……」

 と言う。元アーティストならではの思い入れがあるのかもしれない。

「僕は舞台を用意するだけなんだけど、(このライブを)見る人にとっては。それこそ五輪や外タレなんかの(チケット代の)金額よりも価値があると感じてもらえると思っているけどね」(同)

 公演には“交わる事の無かった2バンド 交わる事の無かった2つの物体 ここに破壊的融合”というキャッチが掲げられている。今回は“聖地”での破壊的融合――ということなのだろう。

渡邉裕二(わたなべ・ゆうじ)
芸能ジャーナリスト

デイリー新潮編集部

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