猛暑日ゼロ「涼しい街」で脚光浴びる勝浦市 かつては大型リゾートが栄えるも“廃墟化”した悲しい過去も
千葉県・勝浦市
この夏も厳しい暑さが話題になった。酷暑が厳しさを増すたびに、関東で最も「涼しい街」として脚光を浴びるのが千葉県・勝浦市だ。南国のイメージが強い南房総にある街だが、かつての大型リゾート地から避暑地へ、まちづくりにも影響を与えそうな転換が起きている。
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勝浦市は、房総半島東岸に位置し、市街地は勝浦湾に面している。海から涼しい風が吹き込んでいることが、涼しさの一因とも言われる。100年間気温35度を超える猛暑日を記録したことがない「猛暑日知らずの街」を市も移住や観光のうたい文句にしている。勝浦へは東京からは特急「わかしお」でおよそ1時間半、車で2時間弱の行程である。
漁港に朝市、海水浴場が観光客を集めるなかで、勝浦駅から鴨川方面の電車に乗って3駅目に、かなりさびれた“秘境駅”がある。行川アイランド駅だ。この駅は、戦後史を象徴するような廃墟の旧行川アイランドの最寄り駅としてつくられた。
漁師町の勝浦だが、平地が少なく鉄道や道路がないと交通の便は悪い。外房線が安房鴨川まで全通したのは1929年で、したがって観光地化は遅れた。
1964年にこの市に開業したのが、南国風リゾートの行川アイランド。勝浦市街地からやや南下して外房線の線路と海岸の間の丘陵地を造成し、フラミンゴショーを目玉に、アシカ、ホロホロ鳥など、動物のショーで人気を博した。海外旅行はまだ敷居が高かった当時において、南国気分を味わえるテーマパークとして首都圏から人を集めた。
交通面でも、両国駅始発だった外房線・内房線の列車が1972年には東京駅に地下ホームを開業させて、東京発着に。勝浦を含めた南房総は、夏になると臨時列車やマイカーで旅する観光客を受け入れていった。
ただし、1970年に鴨川シーワールド、83年に東京ディズニーランドと千葉県にテーマパークが開業していくと、徐々に行川アイランドはシェアを奪われていく。
そもそも房総半島という立地自体が、首都圏以外からの集客が難しい地理的条件にある。東海道新幹線や高速道路で西日本・東日本から観光客を呼び込める熱海・箱根・伊勢志摩と比較すると不利であり、交通網の発達は南房総のアドバンテージを相対的に押し下げていった。
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