「綾瀬コンクリ事件」元少年の「その後」に集まる関心 警察は凶悪犯の“出所後”をどこまで把握しているのか

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再犯防止策としての動向把握

 身もふたもない言い方をすれば、“元犯罪者が野放し”にされているのが日本の現状である。2018年5月に起きた新潟女児殺害事件で逮捕されたK容疑者には、女子中学生の連れ回しで書類送検された過去があったことがクローズアップされた。

「フランスでは、有罪判決を受けた性犯罪者に、監督者との定期的な面談や、住所の届け出を義務付けるなど再犯防止の措置が課されます。これは警察が見回る手間を省くと同時に、元犯罪者の人権を守る機能でもある。乱暴な言い方になりますが、きちんと再犯防止に努めているのであれば、代わりに警察がそちらに行くこともないぞ、というわけです。日本でも似たような形として保護観察があり、保護司が対象の所在地を把握してはいますが、警察もそれを知ることができるかというと、そうではない。警察が保護司に住所を尋ねたとしても、教えてもらえるとは限らないのです。私も現役時代、捜査のため観察対象となっている人物の所在地を保護司に聞いたことがありますが、“そうやって警察が訪ねてくるから更生できないのだ”と拒まれました」

 大阪府では、12年から「大阪府子どもを性犯罪から守る条例」が施行され、子どもへの性犯罪を犯した元受刑者は、出所後5年は住所などを届け出なくてはならない。府からの照会に応じて、法務省は前科者情報を提供している。

 フランスのような住所を把握するシステムの導入は、法務省でも検討されていると小川氏は続ける。

「いざ導入するとなれば、やはり人権や更生を盾に反対する人が現れるでしょう。しかし、元犯罪者の動向を警察が把握することは、警察のためであると同時に、ある意味で本人のためでもある。性犯罪やストーカー、薬物絡みの犯罪は、本人がやめたくてもやめられない性質があります。そのような罪を犯した受刑者は、刑務所で更生プログラムを受けますが、これで本当に“完治”するかというと怪しい。仮釈放や刑期の短縮を目的にプログラムを受ける側面もあるからです。ですから本気でやめたいと思うなら、出所後も自腹を切ってプログラムを受ける“努力”を続けなければならない。その際、同時にそこに警察の“目”があれば、一種の自制力が働くことにもなるのです。こうした再犯防止の取り組みには費用がかかるわけで、“なんで元犯罪者のために税金が使われるんだ”という議論にもなるのですが……」

“一生刑務所から出すな”“死刑にしろ”の極論だけでは、問題は解決しないのだ。

デイリー新潮編集部

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