「綾瀬コンクリ事件」元少年の「その後」に集まる関心 警察は凶悪犯の“出所後”をどこまで把握しているのか

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 8月末、突如として、「女子高生コンクリ詰め殺人」関連のワードがXでトレンド入りした。特に何か新事実が明かされたり新展開があったというよりは、犯人たちのその後に関心を持つ人たちが多く、発信をしたということのようだ。

 いかに凶悪犯であっても出所後は一般人として暮らす権利を持つ。そのため周囲には元受刑者であるかどうかは分からない。だからこそ関心を集めやすいともいえるだろう。

 一般人はアクセスできない類の情報なのは間違いないとして、では警察はどうなのか。出所後もマークするということはあるのか。以下はこのテーマに関する興味深いレポートである(2018年9月10日記事をもとに再構成しました)。

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 週刊新潮は2018年9月、東京・綾瀬で起きた「女子高生コンクリ詰め殺人事件」の犯人の一人が殺人未遂容疑で逮捕されたことを伝える記事を掲載している。それによれば、綾瀬の事件当時(1989年1月)16歳だったS容疑者(45=当時)は、8月19日の午後5時半ごろ、埼玉県内のアパート前駐車場で、駐車スペースを巡って32歳の会社員男性に因縁をつけ、警棒で殴打。反撃されると、今度は刃渡り8センチの折りたたみ式ナイフで男性の首を刺し、逮捕された。

 幸いにも被害男性は命に別状はなかった。当時の記事では彼の証言を以下のように伝えている。

〈「警察に事情を聴かれた時、僕は“あいつ、シャブでもやっていたんでしょう?”って聞いたんですよ。すると、刑事は“そんなレベルの男じゃない。もっと大物だ”と言う。犯人の名前は刑事から教えてもらっていたので、スマホで調べたら『綾瀬コンクリ事件』の犯人だと分かって……。さすがにぞっとしました」〉

“もっと大物だ”という刑事の発言は、容疑者がいかなる人物なのかを知っている上でのセリフに他ならない。であれば、警察はこの容疑者の動向を、あらかじめ分かっていたということなのか。

基本的には把握せず

「基本的に警察は、刑期を終えた元犯罪者の動向については把握していません」

 と解説するのは、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏である。

「出所後にどこに身を寄せるのか。自宅に帰るのか、施設へ行くのか。そういった点の把握はしますが、その動向を逐一追うことはしません。してはいけないのです。なぜなら、更生した、あるいはしようとしている者の邪魔になるからです。警察官がその人物の所在、あるいは近況を探るため、近隣住民に尋ねたとしましょう。対象人物の素性を明かさなかったにせよ、周囲の住民にしてみれば“あの人は何者だ”となる。対象の本人にしてみれば、生活を脅かされたことになり、人権侵害になってしまいます。仮に動向を追うとしても、年に数回の巡回連絡で訪問し、そこにいるかを確認するくらいです」

 海外では前歴者や仮釈放中の人物の体にGPSを装着し、監視を行うシステムがあることは知られている。性犯罪者情報公開法であるミーガン法が制定されているアメリカでは、前科者の位置情報が地図上にマッピングされるサービスまである。これらの国と日本との間には、大きな差を感じるが、

「もっとも『綾瀬コンクリ事件』の犯人のような場合は、一般的な前科者よりは、詳しく動向を把握していた可能性もあります。この事件は、未成年によるまれに見る凶悪犯罪であり、世間的にも有名な事件であるからです。しかしながら、“これくらいの犯罪なら動向を追跡する”という明確な基準が警察内にあるわけではないですし、そういった情報が交番の巡査レベルで共有されていたとも思えません。どこで漏れてしまうか分かりませんから、当然ながら情報の取り扱いは慎重になります。今回の場合でいえば、たとえば所轄警察署の刑事課では所在を把握していて、それが“もっと大物だ”という発言につながったのでは」

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