「越境攻撃」成功もゼレンスキー大統領は「はしゃぎすぎ」と専門家…アメリカ、フランス、ドイツがウクライナの「沈黙」が示す意味
ウクライナのゼレンスキー大統領は8月27日、首都キーウで記者会見を開き、「ロシアの軍事侵攻を終わらせるため」の“勝利計画”を発表した。大統領によると、ロシア南西部にあるクルスク州への越境攻撃は「勝利に向けた計画の第1段階」なのだという。
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計画は第1段階から第4段階まであるといい、外交や経済措置なども含まれているという。それ以上の詳細が明かされることはなかったが、ゼレンスキー大統領は「計画の要点は、ロシアに戦争をやめさせることだ。ウクライナにとって公平な条件で戦争を終わらせたい」と訴えた。
ゼレンスキー大統領は9月の国連総会に出席し、アメリカのバイデン大統領と会談する予定と説明。“勝利計画”が成功するか否かはアメリカの協力にかかっており、大統領選を控えていることから計画はハリス副大統領とトランプ前大統領の両者に提示される見通しだという。
ずいぶんと大きく出たという印象をお持ちの方も多いだろう。確かに、越境攻撃は今のところ勝利を収めているようだが、肝心の東部戦線は膠着状態か、もしくはロシア優勢と伝えられている。何より重要な論点として軍事戦略上、越境攻撃は必要なのかという疑問は専門家の間でも根強い。
デイリー新潮は8月20日、「電撃作戦でロシアにひと泡も…『ウクライナはなぜリスクだらけの越境攻撃に踏み切ったのか?』 軍事・外交の専門家が首を傾げる理由」との記事を配信した。
記事中で軍事ジャーナリストは「ウクライナの越境攻撃はロシアへの攻撃と言うより、アメリカを強く意識した軍事行動の可能性がある」と分析している。その部分を再掲させていただこう。
越境攻撃の意味
《「ゼレンスキー大統領は常にNATO加盟国、特にアメリカに越境攻撃の許可を求めてきました。しかし、プーチン大統領は『もしロシア本土が攻撃されたら、核の使用も辞さない』と公言し、それもあってNATOはゼレンスキー大統領に自重を求めてきました。しかし今回の越境攻撃はウクライナ側の独断で実施されたようです。そしてプーチン大統領は核兵器による報復を実施していません。ゼレンスキー大統領は『ほら見ろ、ロシアの核発言は単なる脅しだ。もっとウクライナに兵器を供与しろ。ロシアを攻撃させろ』と、アメリカに匕首(あいくち)を突きつけるための越境攻撃だったとしたら、それなりの合理性があるとは思います」》
ゼレンスキー大統領の発表した“勝利計画”が「もっとウクライナに兵器を供与しろ。ロシアを攻撃させろ」という内容なのだとしたら、軍事ジャーナリスト氏の分析通りだということになる。またウクライナの越境攻撃が腑に落ちるという方も多いだろう。
だが、ウクライナの前途を楽観視することは難しいようだ。防衛大学校・名誉教授の佐瀬昌盛氏は、東西冷戦の専門家として知られる。佐瀬氏は「率直に言って、ゼレンスキー大統領は少しはしゃぎすぎという印象を受けます」と言う。
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