生成AIは漫画家の仕事を奪うか? プロのイラストレーターがあえて「水彩」の練習に励む納得の理由

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アナログのイラストに活路を見出す

 ベテランのイラストレーターC氏は、「生成AIについては明確に反対です。あんなものが芸術であるはずがないし、いいと思う人は審美眼が低い」と語気を強める。その一方で、生成AIの出現を好機と考え、新たな方向に活路を見出そうとしている。

「生成AIを怖いと思ったこともありますよ。ただ、過度に意識しすぎるとメンタルにも良くないし、技術の進化は止めようがない。だから、意識するのはやめています。その分、僕は絵を描く時間を作ろうとしているんです。僕はこの先に生成AIでもデジタルでもない、アナログイラストの時代が来ると思っているので、毎日水彩を練習していますよ」

 C氏は、アナログイラストをネットやイベントで販売し始めたところ、想像以上に売れ行きが良く、驚いたという。現在は中国人やフランス人などの外国人が顧客になっているそうで、「アナログには商機がある」と考え、技術の研鑽に励んでいるそうだ。そんなC氏が心配するのが、若いイラストレーター志望者にアナログで絵を描いたことがない人が多いことだという。

「専門学校の講師を頼まれてやったことがあるのですが、学生たちはデジタルではまずまずの絵が描けるのですが、アナログだと全然描けない。デジタルでしか本格的に絵を描いたことがないという学生が何人もいて、びっくりしました。彼らはエフェクトを使ったり、既成のフリー素材でそれっぽく見せているだけ。僕は若い感性に勝てないと思った時期もあったけれど、まだ自分は大丈夫だ、ましてやアナログなら勝てると自信を持ってしまいましたよ」

 そして、こうも続ける。

「僕たちの世代は背景も何もかも自分で描くしかなかった。今の人たちはめんどくさい背景は、なんでもフリー素材に頼っちゃうでしょう。あれははっきり言って手抜き。絶対に良くないよ。素材に頼ると苦手なものが上達しないままプロになってしまう。こんな状態では生成AIに淘汰されても当然ですよ。だって、生成AIの方がうまいもん。ましてやファンタジー系のイラストや漫画を描く人は、城とか街並みに素材使っちゃダメでしょ! そこは世界観を作るうえで大事なんだから、自分で描いたほうがいいと思うけどなぁ……」

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