「日本の音楽市場を狙い撃ち」 韓国の芸能事務所スカウトマンが血眼になって探す「K-POPアイドルの卵」

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練習生の激減

 マナさんの背中を押しているのが冒頭で述べたK-POPアイドルグループにおける日本人メンバーの活躍だ。BTSの弟分として日本で最終選考が行われてデビューした9人組ボーイズグループ・&TEAM(エンティーム)は、HYBE LABELS JAPANの所属で日本人メンバーが大半を占める。8月7日に発売した新曲「青嵐 (Aoarashi)」はBillboard JAPAN週間シングル・セールス・チャート“Top Singles Sales”で首位を獲得した。

 同じくHYBEの傘下レーベルに所属する5人組ガールズグループ・ILLIT(アイリット)は韓国人3人、日本人2人(イロハ、モカ)で構成。3月25日に1stミニアルバム「SUPER REAL ME」をリリースし、タイトル曲「Magnetic」は音楽番組で12冠を獲得。さらにアメリカ・ビルボード「HOT100」で91位にランクイン。新人グループのデビュー曲が同チャートにランクインしたのはK-POP史上初となる快挙だ。同グループは日本テレビ系「世界の果てまでイッテQ!」に出演し、お笑いコンビ・ガンバレルーヤのダイエット企画に協力。一緒に「Magnetic」を披露して笑いを誘った。

 極めつけは5人組ガールズグループ・UNICODE(ユニコード)。メンバー全員が日本人という。同グループはオンラインオーディション「PROJECT K」の選抜メンバーを含むミオ、ハナ、エリン、スア、ユラで構成され、韓国では4月17日にアルバム「HELLO WORLD:CODE J EP.1」でデビュー。7月にはシングル「HELLO WORLD」で日本デビューを果たした。また、韓国の大手エンタメ企業・CJENMと吉本興業の合弁会社LAPONEエンターテインメントに所属しているJO1、INI、DXTEEN、系列のLAPONE GIRLS所属のME:IとIS:SUEの各メンバーも一部中国人メンバーのほかは日本人だ。

「これらのボーイズグループ、ガールズグループのメンバーは日本国内で開催されたオーディション番組で選抜されたとしても、いずれもその後、韓国にわたり現地でダンス、ボーカル、筋トレの基礎訓練からたたき上げられ、語学やSNSの知識、表情管理や演技、楽器演奏、美容なども指導されます。日本から韓国へ、そして韓国で育成されてから日本へと戻ってくるため、日本側から見るとアイドルの“逆輸入”とも呼べるような循環現象が起きています。韓国大手芸能事務所のスカウトマンも大勢日本に来て、次世代のK-POPアイドルの卵を血眼になって探していますよ」(前出の音楽ライター)

 こうした中、気になるのはK-POPアイドルを目指す練習生の激減だ。韓国コンテンツ振興院の調べによると、K-POP練習生の数は2020年の1895人から2022年は1170人となり、4割近くも減少。デビューできる割合も2016年の80%から2022年は65%に止まった。練習生になってもデビューできるとは限らない、というわけだ。

 ただ、国内のレコード会社関係者はこう指摘する。

「韓国でのK-POP市場は大物アイドルグループの続出で飽和状態になってきたことが練習生減少の1つの理由でしょう。だからこそ、彼らは日本の音楽市場を狙い撃ちにしているのです。NiziUの大成功以降、国内の大手レーベルやテレビ局、芸能プロダクションが韓国の大手事務所と提携する事例が急増し、お笑いの吉本興業も韓国側と組んでJO1、INI、ME:Iをスターダムに押し上げました。

 典型的なのがME:Iのメンバー、笠原桃菜と石井蘭です。笠原は日本のアイドルグループ・アンジュルムとハロー!プロジェクトの元メンバー、石井もLDH JAPAN系のアイドルグループGirls2(ガールズガールズ)に所属していましたが、なかなか芽が出ずLAPONEエンターテインメント主催のオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』に応募してグローバルデビューをつかみ取りました。LAPONE所属アーティストを一律に“K-POPグループ”と呼ぶことには議論がありますし、同社もそうは名乗っていません。ただ、韓国に渡ることが日本でアイドルデビューを果たす近道であることを証明した事例と言えるでしょう」

 限りなく狭き門であるのは間違いない。それでも“K-POPアイドル”になりたい日本の若者が続出している現実が、日本のアイドル育成産業の伸び悩みを物語っているのかもしれない。

デイリー新潮編集部

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