「ビルから人が落ちてきた」「何も着ていない女性も」「内部温度は700度に」 44人が死亡した「歌舞伎町ビル火災」地獄の現場
8月9日、新宿・歌舞伎町の雑居ビルで火災が発生した。幸いけが人などは出なかったものの「歌舞伎町」「雑居ビル」「火災」と並ぶと、「あの災害」を思い出す方も少なくないだろう。
それは皮肉にも「防災の日」の大惨事だった。今から23年前の2001年9月1日未明、新宿・歌舞伎町で発生した雑居ビルの火災は、1982年のホテル・ニュージャパン火災を上回る44人もの犠牲者を出すこととなった。
「まだ逃げ遅れがいるぞ」「もうダメだ」――一転して地獄絵図と化した現場に飛び交う怒号と絶叫。
その時、何が起きていたのか。迫真のレポートである(「週刊新潮」2001年9月13日号の記事をもとに再構成しました)。
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週末のにぎわう歌舞伎町で
「さあ、セーラー服いかがっすか、触り放題、もみ放題、1時間5000円で飲み放題、いかがっすか」
深夜零時を回り、日付はすでに9月1日に変わっていた。
靖国通りからコマ劇場に向かう歌舞伎町一番街に位置する「明星56ビル」前では、呼び込みたちが、週末の雑踏を行き交うサラリーマンや酔客に盛んに声をかけていた。
火災が発生した4階建ての同ビルは、1階に歌舞伎町の大人向けサービス店の案内や割引券を置く情報店、2階に女性が特殊なコスチュームを着てサービスするクラブ「セクハラクリニック」、3階にマージャンゲーム店「一休」、4階にクラブ「スーパールーズ」が入居する典型的な雑居ビル。間口は5メートルほどと狭いが、奥行きは約16メートルもあるいわゆるペンシルビルだ。
このうち、男性18人、女性10人と全体の半数以上の犠牲者を出したのが、4階の「スーパールーズ」である。
「いらっしゃいませェ」
エレベーターが開くと、すぐ目の前にあるカウンターにズラリと腰かけた、色とりどりのセーラー服にルーズソックス姿の女の子たちが振り向く。照明を落とした薄暗い店内を左手の奥に進むと、壁に沿ってコの字形にソファーが並び、女性はテーブルを挟んで1対1で接客してくれる。
「つい先日も楽しんできたばかりでした。中には家庭に複雑な事情を抱えている女の子もいましたが、若くて明るい子が多かった。でも、よく指名していた女の子も今回は亡くなってしまって……」
と常連客の一人は言う。
「40分から50分に1回のダウンタイムというお触りサービスが売り物でした。突然、音楽が激しく鳴り始め2000円のチップを払うと女の子がお客の膝の上に“抱っこちゃん”スタイルで乗っかって、セーラー服の前の部分をはだけて、“痛いから、かむのはやめてね”“下はダメよ”などと言いながら、10分近くもサービスをしてくれるんです」
かつて同店に勤務していた女性(19)によれば、
「個室サービスなどはありませんでしたが、セット料金が税別で6900円からと手頃なせいか、よくサラリーマンの接待などにも使われていました。いつもいる女の子は平日で8人くらい、週末で10人ちょっと。何人かは専門誌に写真入りで紹介されたこともあります。面接の時、店長には過激なサービスはないから、と言われましたが、お客さんとの交渉次第ではかなりのことをさせている女の子もいましたね」
この手の“抱っこ”を売りにした店はこの3~4年で急速に増えたという。
「歌舞伎町エリアだけでも50店は下らない」(事情通)
火元になった3階のマージャンゲーム店「一休」では、その時テレビマージャンに興じていた15人の客全員が犠牲になった。従業員5人のうち通りに面した避難口や反対側にある厨房の窓から外に飛び降りて3人が助かったが、2人は重傷を負っている。
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