「みどりの窓口」廃止のウラで進む鉄道“キャッシュレス”最前線 「Suica」「PASMO」がなくなる日は来るか
QRの「メリット」「デメリット」
「QRの最大の利点はSuicaを利用していない人でもスマホひとつで、乗車券を買えるようになることです。たとえば新幹線やJRの特急列車などをネット予約できる『えきねっと』でチケットを購入する際、今後はQRコードでの乗車も選択できるようになり、在来線や新幹線にシームレスで乗れるようになる。鉄道会社にとっても券の発行が不要となり、コスト削減の効果は大きい」(同)
一方で、こんな懸念も浮上している。
「QRコードの決済処理速度はSuica など“交通系ICより遅い”とされ、通勤時など混雑する時間帯に改札付近でヒトの流れが停滞する可能性が指摘されている。また高齢者のなかにはQRコードに不慣れな方も多いため、年齢層によっては“使い勝手が悪くなる”と不安視する声もある」(同)
鉄道ですすむキャッシュレス化の新しい波として、もう一つ、注目されているのが「新型Suica」という。
“クラウド型Suica”
「これまでのSuicaはカードをタッチする改札機で運賃計算などが行われていましたが、新型Suicaはセンターサーバーで運賃計算などを実施。要は“クラウド化”することで処理能力が上がり、将来的には限度額の引き上げや事前チャージからオートチャージへの移行も可能になるといわれています。すでにJR東日本管内では23年5月からセンターサーバー方式に対応した改札機が順次、導入されています」(同)
そのJR東日本に、地方の鉄道事業者が全国交通系ICカード網からの「離脱」を続々と表明している現状への見解を求めると、
「個別の事業者の導入・廃止について当社が回答する立場にないが、交通系ICカードが利用できる交通機関の維持拡大に対しては引き続き必要な協力をしてまいりたい」(同社コーポレート・コミュニケーション部)
と回答。またQRコード乗車券への移行で利用者側にデメリットが生じる可能性について訊ねると、
「お客さまのご利用に支障のないサービスを提供できると考えている」(同)
と答えた。SuicaやPASMOをはじめとした交通系ICカードの全国相互利用サービスがスタートしたのは2013年。10年の節目を越えて「変革の時」が訪れているようだ。