「腰痛の85%は原因不明」 病院で治らない腰痛を自分で治すための「三つのエクササイズ」

ドクター新潮 ライフ

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腰痛の未来

 ちなみに、重い荷物を持ち上げる際に、つい「よっこいしょ」と言ってしまうことがあると思います。年を取った証などと揶揄されたりするかもしれませんが、実はこれは理にかなった行動なのです。声を出すことで腹横筋に力が入りやすくなり、体幹部を支えて防御体勢を作る準備ができるからです。

 最後に、「腰痛の未来」についてお話をしたいと思います。

「最近忙しくて、疲れがたまっちゃってさ。腰に来ちゃって、痛いし、凝るし」

 現役世代の40代、50代で、こんなセリフを口にした記憶がある人はいないでしょうか。そして、

「マッサージ代もバカにならないよね」

 と、続ける。慌ただしく、馬車馬のように働く日々の生活を自嘲し、あるいはどこかちょっと誇るかのように……。

 気持ちは分からなくはありません。また、マッサージなどで緊急避難的に痛みを解消するのもやむを得ないでしょう。しかし厳しい言い方をするようですが、医師の立場からは、そんな人に対して、次のように警鐘を鳴らさざるを得ません。

 マッサージなどで対症療法的に腰の痛みを軽減させるだけでは、「見えない腰痛」の根本的原因である身体機能の衰えに向き合おうとせず、根治に向けた努力を怠っているに等しいのです。「今」はマッサージや薬で痛みをしのげていたとしても、身体機能の低下は続き、腰への負担の積み重ねによって椎間板はつぶれ、骨は変形し、神経を圧迫し脊柱管狭窄症などの見える腰痛としての本当の「病気」になってしまう「未来」が待っています。

どこか軽く見られている腰痛

 またそれだけではなく身体機能の低下はいずれ二足歩行を不可能にし、杖歩行という三本足をへて、四つ足(寝たきり)生活に至ってしまいます。そのため健康寿命を延ばすには今の腰痛を克服するための身体機能の改善を実践する必要があるのです。

 人生100年時代、脳や臓器をいかに健康に保つかという意識は年々高まっています。しかし、最期まで二足歩行を保ち、健康寿命を全うしたいのであれば、腰痛への対処も、メタボや認知症などへの対策に勝るとも劣らない大きな課題です。それなのに、どこか腰痛は軽く見られていないでしょうか。腰痛の原因に向き合わないツケを、将来寝たきりになって払わされることになるのは、他ならぬ自分自身であるのに……。

 腰痛を感じた時には、それを軽く考えず、自分自身の体を見つめ直す機会にしてください。

金岡恒治(かねおかこうじ)
早稲田大学スポーツ科学学術院教授。1962年生まれ。筑波大学医学専門学群卒業。同大整形外科講師を務めた後に早稲田大学でスポーツ医学、運動療法の教育・研究に携わる。シドニー・アテネ・北京五輪では水泳チームドクター、ロンドン五輪ではJOC本部ドクターを務めた。『その腰痛は治る!』『腰痛は、タイプ別ちょこっと運動で治す!』等の著書・監修書がある。東京・広尾のSPINE CONDITIONING STATIONにて、腰痛のセカンドオピニオン外来を実施している。

2024年8月29日号掲載

特別読物「それは本当に『病気』なのか? 『腰痛』は治療ではなく自分で治す」より

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