「土壇場で裏切るのが自民党」 大混戦の総裁選で「推薦人20人」のハードルを越えられるのは誰だ

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 さみだれ式の出馬宣言で、自民党総裁選は過去に例を見ない大混戦。10人以上が取り沙汰される異例の展開だが、彼らには推薦人確保という“壁”が立ちはだかる。

 政治部デスクが解説する。

「党の総裁公選規程により、立候補には20人の推薦人が必要で、今回は9月12日の告示日に党選管に彼らが署名・捺印した名簿を提出する必要があります。ハードルは割と高く、過去の総裁選でもその確保が注目を集めてきました。一方で、推薦人に名を連ねる側も“勝ち馬”を見極める難しい判断が求められます」

 それはのるかそるかの大ばくちにも似て、

「推す相手を間違えると、その後は冷や飯を食う羽目になる。しっかり覚悟を決めなければ、普段はいくら仲が良くても、おいそれと名前は貸せませんよ」

推薦を約束していても……

 すでに12人(8月27日現在)が出馬を示唆しており、投票権を持つ367人の衆参議員のうち約240人が各陣営に分かれる格好に。この点について、さる自民党幹部は首をかしげる。

「本人と推薦人を差し引いたら、残る浮動票は115票ほど。これじゃあ、議員票の重みに欠けてしまう」

 裏金問題をきっかけに麻生派を除く派閥が解散を決めたことで、派閥の縛りがなくなり乱戦模様に拍車がかかったとも指摘する。

「それに自由競争といえば聞こえはいいが、推薦人確保にめどが付いている候補は一部だけ。いまの時点で推薦を約束していても、土壇場で裏切るのが自民党の権力闘争。かつての三角大福中を引くまでもなく、血で血を洗う死闘はわが党の歴史から明らかです」

 例えば、日本が高度経済成長期の真っただ中にあった昭和39年には、人気のウイスキーの銘柄をもじった隠語が飛び交った。この時は2期目の総裁を務めていた池田勇人、佐藤栄作、藤山愛一郎、そして灘尾弘吉の四人が争っている。

「推薦人集めではなく無記名の投票を念頭に置いたものでしたが、2陣営から実弾、つまり現金を受け取る議員を“ニッカ”、3陣営からもらうと“サントリー”。すべての陣営から受け取り、誰に投票したか分からない節操のない議員は“オールドパー”と呼ばれた。所属派閥に忠誠を誓うのは“生一本”。最終的に池田が3選を決めましたが、議員らの思惑に現ナマが絡んだ激戦として憲政史に刻まれました」(自民党古参幹部)

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