「夏の甲子園」スカウト陣の評価を急上昇させた“3選手の実名”

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攻守ともレベルアップした、こちらもショートの注目選手

 野手でもう1人。スカウト陣が有望株にあげるのは、宮崎商の中村奈一輝だ。スポーツメーカーの“NIKE(ナイキ)”が名前の由来となったことでも話題になった大型ショートである。
 
 チームは初戦で中京大中京に競り負けたが、たびたび軽快な守備を披露。レフト前に鋭く弾き返すヒットも放つなど、持ち味を発揮した。

「あれだけ大型の選手(身長183cm)でも動きに軽さがあるところがいいですね。細かいステップが下手な長身の選手は多いですが、中村はしっかりしています。肩も強いし、打撃ではリストの強さがある。(体重は70kgで)高校生のなかでも細いですが、しっかり体ができてくれば、打撃も守備もまだまだ良くなってくると思います」(パ・リーグ球団スカウト)

 筆者は、今年5月に行われた練習試合を中村のプレーを見た。この時は、打撃では、踏み出した左足が三塁側に寄り過ぎる“アウトステップ”の傾向が強すぎて、腰が引けるスイングが多かった。一方、守備の動きは良かったが、雑なプレーも目に付いた。

 しかし、今大会では、これらの課題が解消されており、攻守ともにかなりレベルアップした印象を受けた。プロ球団にとって、運動能力が高い大型ショートは魅力的な選手だ。最後までドラフトの指名リストに残す球団も多いだろう。

元は野手だった190cmの大型右腕

 最後は投手。聖カタリナの190cm右腕、有馬恵叶である。本格的に投手に転向したのは、高校入学後。公式戦の登板は、夏の愛媛大会が初めてという“遅咲きの投手”だ。今大会で自己最速を3キロ更新する146キロをマークした。チームは、初戦で岡山学芸館に0対1と競り負けたものの、有馬は7回2/3を投げて自責点0で見事なピッチングを披露した。

 パ・リーグ球団スカウトは、驚きを隠さない。

「こんなピッチャーが、この夏まで投げていなかったとは驚きですね。(長身の選手は、投げるバランスが悪いことが少なくないが)有馬はバランスが良いですし、落ちる変化球も上手く投げていました。投手に転向する前は、外野手だったみたいですけど、走る姿もいいし脚力もある。しっかり鍛えたら、ビックリするようなボールを投げるようになりそうですね」

 有馬は試合後、育成でもプロ入りを目指す考えを表明した。今年は、高校生の有望選手が多く、支配下指名の枠は限られる。このため、育成選手を多く抱える球団にとっては、狙い目となる選手になりそうだ。

 今回、取り上げた選手たちが、果たして、どの球団から指名されるのか。引き続き、動向をチェックしていきたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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