トラウデン直美はむしろ被害者? 「おじさんいじりをする若い女性」を喜んできたテレビ業界の罪

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テレビ業界が求める「おじさん転がし」スキルは火種の元に? コメンテーターの次に危ないポジションとは

 これがおじさんではなくおばさんだったら、「おばさんの詰め合わせ」などと口にしなかったのではないか、という指摘もあるが、素直にうなずくことはできない。バラエティーの定番として、「女の敵は女」という趣向がある。若い美人モデルや女子アナが、アラフォー以上の女性芸人や独身タレントを「モテないおばさん」と笑う番組は山ほどあった。あれもまた、男性MCやプロデューサーが、「そういう画が面白い」と誘導していた部分は大きい。番組の偉いおじさんたちが言ってほしいことを瞬時に読み取れる才女であればあるほど、批判相手が女性だろうとバッサリいく。例外は、相手が一般人だった時だけだ。それは影響力のバランスを欠いた、弱いものいじめになってしまうからである。

 テレビ業界の偉いおじさんたちを喜ばせるため、別のおじさん批判をする。トラウデンさんは、テレビ業界特有の「おじさん転がしスキル」の要求に適応し過ぎたともいえるわけだが、こうした炎上は減ることはないだろう。特に注意が必要なのは、無礼さと紙一重の、物おじしないはつらつさが売りのギャルタレントたちではないだろうか。共演する男性芸人MCや梅沢富美男さんといった、スナックしぐさを受けてくれるタレントのみに限る掛け合いならまだいいが、「おじさん」と属性をひとくくりにしてけなせば反感を買う。若者代表として、おじさん文化へのカウンター的存在として呼ばれがちなギャルタレントは、火中の栗を拾わされるリスクも高いといえる。

 おじさんをバカにするノリが成り立っていたのは、おじさんが社会的強者だった時代だけ。現実の世界では、トラウデンさんのような若く高学歴の美人が最も発言力を持っていて、息をひそめて生きている中高年男性は少なくない。おじさんが頂点にはびこるテレビ界では、そのズレに気付かなかったのだろう。

 期待に体を張って応えただけなのに、矢面に立たされているトラウデンさんは、テレビ界のおじさんたちの被害者だ。以前からコメンテーターという仕事への迷いを明かし、涙ぐんでいたこともある。理屈だけで感情の乗らないコメントをしがちな傾向や、それにより「うそくさい」「薄っぺらい」と批判を浴びることへの戸惑いや不安があったという。本当は女優に関心があるとも語っていたが、コメンテーター業で嫌というほど培(つちか)った、お偉いさんの意図をくみ取れる能力は演技の場でもきっと役に立つ、と慰めておきたい。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部

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