トラウデン直美はむしろ被害者? 「おじさんいじりをする若い女性」を喜んできたテレビ業界の罪

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 8月21日放送の「news23」(TBS系)で、タレントのトラウデン直美が自民党総裁選のポスターを「おじさんの詰め合わせ」と発言して炎上した問題。ライターの冨士海ネコ氏が、「彼女はむしろ“被害者”なのかも」と指摘する理由とは。

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 偉い地位にあるシニア男性がスナックに通う理由を、「ママに怒られたいから」と言っていてびっくりしたことがある。会社ではもう誰からも注意されなくなって物足りないので、年齢も経験値も下の女性にズバッと言われるのが新鮮で楽しいのだそうだ。

 テレビを見ていると、その手の「スナックしぐさ」フォーマットは確かに長いこと存在している。長嶋一茂さんや大御所芸人にも塩対応のみちょぱさん。田原総一朗さんや松本人志さんをたしなめる三浦瑠麗先生。明石家さんまさんの悪ふざけに怒るフジテレビの女子アナたち。「おじさん」たちの暴走や妄想を、彼らより若くテレビ歴も浅い女性が一刀両断することで笑いを取る。「こりゃ一本取られましたなあ」とニヤケ顔の男性タレントたちは好感度を上げ、スナックママ的な女性タレントたちは「賢い」と知名度を上げる。実に理想的な、win-winの関係である。

「news23」内での自民党総裁選ポスターに対する「おじさんの詰め合わせ」発言が議論を呼んだトラウデン直美さんも、まさにスナックしぐさをしただけだろう。発言の前には、45歳の藤森祥平アナウンサーから、「ちょっと女性の姿がありませんけど、いかがですか?」と水を向けられていた。テレビのお約束通り、おじさんをぶった斬ってよ、というパスが渡されていたのだ。

 人気女性誌のモデルを務める傍ら、慶應義塾大学卒の才女としても知られるトラウデンさん。パスを無視して当たり障りのないコメントをするよりも、藤森アナやプロデューサーら、「テレビ局のおじさん」たちの思惑通りに振る舞う方が得だと計算できないわけがない。絞り出した「おじさんの詰め合わせ……って感じがするんですけど」というコメントは、守り過ぎず攻め過ぎずの絶妙なラインに乗っている。断定にせず相手の判断に委ねる語尾にしたことで、ちゃんと逃げ道も作れたと考えていたはずだ。

 自民党と同じくらい旧態依然としたテレビ業界において求められる、「おじさん転がし」スキルを見せたトラウデンさんは見事だった。しかし、なぜか転がそうとした覚えもない人たちからの批判が噴き上がる、という状況に陥っている。

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