ギャラは地上波の「5倍」 撮影期間は「倍以上」 Netflix躍進で「テレビドラマ界」に上がる悲鳴
独立組の強い味方
撮影が長引くこと自体に不満を訴える俳優はいない。良い作品をつくるために撮りが長引くのなら、仕方がないのだから。Netflix作品の場合、十分なギャラも支払われているので、余計にそうだ。
Netflixの台頭によって思わぬことも起きている。かつては芸能界で冷や飯を食わされた独立組が、ダメージを避けられるようになった。
テレビドラマ界の力が低下したためである。かつては俳優に独立された芸能事務所が各局に対し、「起用するな」とプレッシャーをかけた。俳優は困った。しかし、今の俳優にはNetflixや映画があるから、テレビドラマに頼らなくても済む。
2016年末にSMAPが解散したあと、いまだ草なぎはフジ系以外の民放ドラマに出演できないが、これも困らない。「新幹線大爆破」で十分に存在感が示せるはずである。
一方、各局はCM収入が回復しないため、1回当たり3000万円の制作費の確保すら難しくなっている。今年に入ってから放送されたドラマの中には制作費が2500万円を切った作品もある。もはや節約して乗り切れるレベルではない。プロデューサーはドラマのクオリティを高めることより、いかに予算を切り詰めるかで頭がいっぱいになってしまうだろう。
制作費不足のドラマは瞬時に分かる。通常のドラマよりカット(場面)数が少ないからである。カットとは、同じ構図の映像。カット数が多いほど見応えが出る一方、少ないと退屈な映像になってしまう。
プロの俳優以外のタレント、お笑い芸人が起用されやすいのも制作費不足のドラマに見られる特長。演技のプロでなく、ドラマ出演の実績も少ないと、ギャラが安く抑えられるためである。
ドラマの質を決めるのは「1に脚本、2に俳優、3に演出」というのが国内外の古くからの常識だが、制作費が不足していると良質の脚本もつくりにくい。脚本家が執筆に時間をかけられないからだ。
Netflixの7月18日の発表によると、世界全体の会員数が2億7765万人。6月までの3か月間に会員は805万人増えた。躍進が続いている。
日本の会員数は推定810万人。NHKの受信契約総数が2023年度末の時点で4107万件だから、もはやNetflixは一部のマニアのものではなくなった。
テレビドラマ界にとっての危惧は、俳優たちにないがしろにされるようになってしまうことではないか。既に「ドラマに出るのは顔を売ってCMを取るため」と、冷めた言葉を口にしている芸能事務所スタッフもいる。
テレビドラマ界は有料配信との制作費格差、ギャラ格差をどう埋めるか真剣に考えるべき時期だ。Amazonプライム・ビデオのギャラもテレビドラマの5倍程度あり、いずれは考えなくてはならない問題なのだから。
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