【防災の日】巨大地震が起きたときに「必ず守るべき体の一部」とは 忘れがちな安全確保の基本をおさらい

国内 社会

  • ブックマーク

 週末にかけて大型の台風10号が日本列島を通過し、ゲリラ豪雨や風水害のニュースが伝えられる中、今年も9月1日の「防災の日」を迎えることになった。台風災害も気になるが、今年は元旦に能登半島沖で、そして8月8日には日向灘で地震が起きており、南海トラフや首都直下地震への警戒は変わらない。SNSの普及により、緊急地震速報や情報伝達の速度は進化しているが、そんな最中で忘れがちな地震対策の基本を考えてみた。

いつ、どこで?

(1)阪神・淡路大震災 1995(平成7)年1月17日(火曜日)午前5時46分
(2)新潟県中越地震 2004(平成16)年10月23日(土曜日)午後5時56分
(3)福岡県西方沖地震 2005(平成17)年3月20日(日曜日)午前10時53分
(4)新潟県中越沖地震 2007(平成19)年7月16日(月曜日)午前10時13分
(5)東日本大震災 2011(平成23)年3月11日(金曜日)午後2時46分
(6)令和6年能登半島地震 2024(令和6)年1月1日(月曜日)午後4時10分

 阪神大震災以降の主な地震の発生日時を一覧にするとこうなる。平日では早朝、他は週末や学校が休みの日に起きている。だが、東日本大震災では下校時間帯と重なったこともあり、地震後に起きた津波からの避難誘導をめぐり、多くの児童が命を落とす悲劇を生んだ。今年8月の宮崎県・日向灘地震の発生は午後4時43分。木曜日だったが、学校は夏休みだった。

「防災の日」は、関東大震災が起きた日にちなんでいる。同震災は1923(大正12)年9月1日、午前11時58分の発災。この日は土曜日だった。

 災害はいつくるかわからない。しかし、地震が起きた日(時間)と、自分がどこにいたかは大きな意味を持つ。休日だったので自宅か外出先。平日で会社、あるいは移動中で電車や車の中。子供なら学校のある日かどうか……いつどこで地震が起きたとしても、何よりも大切なのは、自身の身を守り二次災害に備えることである。

「首都直下地震では、住宅や建物が密集している東京では、地震後の火災被害への警戒や対策が重要視されています。もちろん二次災害への対処も重要なのですが、一番大切なのは“自分の身を守る”こと。東日本大震災の際、仙台市内のオフィス街や繁華街では、ビルの上階から割れたガラス片が落ちてきて、頭部をケガする人がいました。目の前や周囲に注意や関心は向くのですが、上方=頭部に警戒を払うことを忘れてしまいがちなのです」(全国紙社会部記者)

 気象庁の調査によると、元旦の能登半島地震で東北から近畿にかけ21県を対象に緊急地震速報を発表した。携帯電話やスマートフォンで受け取った人が8割近くを占めていたが、その際、「何らかの行動をとった」と答えた人は全体の61%だった。多くを占めたのは、

「その場で身構えた」

「テレビやラジオ、携帯電話などで地震情報を知ろうとした」

「周囲から倒れてくる物がないか注意した」

低い姿勢で、頭を守る

「低い姿勢で、頭部を守り、動かない」

 地震が起きた時に命を守るための安全確保行動である。この三つの行動を身につける「シェイクアウト訓練」はわが国でも広く知られており、自治体や企業などで導入されている。

 低い姿勢をとることで、強い揺れで自分が転倒しないように気をつける。そして机やテーブルの下に隠れて頭を守る。机がないときは手や荷物、クッションなどで頭をガードし、揺れが収まるまで体を丸めてじっと動かないことである。前述の調査にあった「その場で身構える」のはまだよしとしても、テレビやスマホに気を取られて落下物の直撃を受けるようなことは避けたい。また、二次被害の状況や避難経路の確認・確保など、周囲に注意を払うのは地震の揺れが収まってからであり、揺れている時はとにかく頭部を中心に、自分の身を守ることが最優先となる。

 国会議事堂の衆議院本会議場。議員席の下には、組み立て式の防災ヘルメットが入っている。配備されたのは2017年。1986年から防災頭巾を備えていたが、東日本大震災を受け、ヘルメットに変更になった。地震で議場の上にあるステンドグラスが割れても身を守れるというわけだ。衆院では2017、19、22年に本会議中の地震を想定し、ヘルメットを装着する訓練を行っている。

 ちなみにこのヘルメット、参院側には常備されていない。東日本大震災の発生時は、参院決算委員会の質疑中で、出席した議員たちは、分厚い紙の資料で頭を守っていた。参院警務部によると、

「議院運営委員会でヘルメットの導入は了承されており、速やかに設置される予定です」

 国会でも地震の際に「頭部を守ること」を重く見ている。腕や足など、他の部位のケガも避けなければいけないが、頭部に受傷した場合、致命傷だけでなく、あとまで尾を引く重篤なケガを負う可能性がある。上述のガラス片に加え、看板、屋根の瓦やコンクリート片。自宅なら食器棚や本棚などの家具が倒れる。それらが倒れないにしても皿や本などの中身が、頭上に落ちてくる危険性が十分にある。

 東京都の防災ホームページには、都総合防災部が作成した「外出時の行動マニュアル(地震発生時)」がある。「繁華街」「駅」「電車の中」「劇場・ホール」「デパート・スーパー」「空港」などでは真っ先に、

「かばん等で頭を保護する」

 とある。「繁華街」ではさらに、「落下物から身を守り、ビルの倒壊にも注意しながら公園などの広く安全な場所へ避難」するか、その余裕がない場合は「耐震性の高い比較的新しい鉄筋コンクリートのビルに逃げ込む」とあるが、これはオフィス街でも同様だろう。

 住宅街の場合は「瓦やガラスなどの落下物から身を守る」、そして「ブロック塀などが崩れると押しつぶされることがあるので近づかない」。空港では「ガラスや天井の落下に備える」としている。

「スーパーやデパートでは、買い物かごで頭を保護するのも一つの手段として有効であり自治体や消防のHPで紹介しているところもあります。また街中ではよく見かける自動販売機の転倒にも注意が必要です」(前出・記者)

次ページ:もしも就寝中に地震が来たら……

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。