経営学の専門家が明かす、自らの「超保守的な資産運用」 「アクティブな投資が長期的にペイしないことは学術的に実証済み」

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 経営学や企業の競争戦略を専門とし、『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』の著作がある一橋ビジネススクール特任教授の楠木建氏(59)は“お金”とどう向き合っているのか。その「超保守的ポートフォリオ」の神髄を明かす。

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 僕の全資産を100とするならば、25%は現金の普通預金で、残りの75%は信託銀行の口座に預け、銀行の担当者に運用を任せています。

 僕からその担当者にリクエストしているのは「長期」「分散」「低コスト」「低リスク」で運用してほしいということ。ただし、どこに投資するかといった細かいことに僕から口を挟むことは一切ありません。

 年利数%で運用しようなんて思ったこともなく、手数料を極力安くしてもらった上で、年利0.5%でも利益が出れば「やったー!」という感じです。預けている分の内訳は債券が半分以上で、株式は一部含まれるものの、テーマを設定せず、幅広く買ってもらっています。

 運用担当者に任せているのは、そもそもポートフォリオの中身について考えるのが「面倒」で「煩わしい」からです。担当者の仕事はプロとして国内外のさまざまな情勢を見ながら、市場への影響を見極めること。いまならバイデン米大統領の撤退が市場に与える影響というのが少なからずあるのでしょう。そういうことを考えたくないので、担当者に任せています。

「アクティブな投資判断はペイしない」

 実は10年ほど前までは信託銀行に預けもせず、普通預金がほぼ100%でした。それで困ることも特になかったのですが、その頃、ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のユージン・ファーマ先生と一緒にお仕事をする機会がありました。

 ユージン・ファーマ先生は「効率的市場仮説」を提唱しました。つまり、市場というのは効率的なものであり、すべての市場価格にはあらゆる情報が集約されている。すると、マーケットが適正な価格からかけ離れることはないわけですから、割安な株を狙うなどのアクティブな投資判断というのはペイしない。緩やかに成長するマーケット全体をカバーするように購入し、放置しておくのが一番だということです。

 これは僕の「意見」ではなく、学術的に実証されていることです。

 仮にアクティブな投資を行って利益を出したとしても、一時的に良い結果が出ているだけかもしれません。また、ファンドマネージャーなど、投資した人物の能力の結果なのか、運の結果なのか、が判別できません。さらにアクティブな投資には信託報酬など高いコストがかかります。

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