“テッテレー”から“掛け合い”へ 撮れ高が保証されない「ドッキリ」を進化させ続ける「フジテレビ」の飽くなきこだわり

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とんねるず番組のディレクターがもたらした“発明”

「ドッキリはざっくりと2種類に分かれると思っているのですが、一つが精神的なドッキリ、もう一つが物理的なドッキリです。前者は、『ロンドンハーツ』や『水曜日のダウンタウン』などが当てはまります。『めちゃ×2イケてるッ!』のよゐこ・濱口さんへの大学受験のような長期間にわたるドッキリもそうですね。対して、後者が『とんねるずのみなさんのおかげでした』の全落・水落オープンや、僕たちが手掛ける『ドッキリGP』です」

 フジテレビは、他局と比べると今でも物理的なドッキリを仕掛ける印象があるが、「画的に子どもでも楽しんでもらいやすい」ことが理由の一つだといい、それを可能にしているのは、フジテレビが誇る裏方陣の存在が大きいと明かす。

「80年代、90年代を知っているスタッフ、特に美術さんの経験が今に受け継がれていることは、フジテレビの大きな財産だと思います。『とんねるずのみなさんのおかげでした』でセットを作っていた美術さんが、僕らの番組にもいるのですが、“塩梅”を分かっている。『みなさんのときはこうだった』など的確なアドバイスをしてくれるので、攻めたことができるんですね」

 また、担当する番組こそ違うが、現場で培った経験とスキルを共有できることも、フジテレビのドッキリイズムだと続ける。

「僕の同期の一人が、現在、『ドッキリGP』で総合演出を務める中川(将史)なのですが、彼はもともと『とんねるずのみなさんのおかげでした』のディレクターでした。『とんねるずのみなさんのおかげでした』のドッキリは、ネタばらしをして終わりではなく、落とし穴に落ちた後に、とんねるずさんと引っかかった演者の掛け合いが始まります」

 こうしたネタばらし後の掛け合いを、「ドッキリ史における発明」だと蜜谷氏は笑う。その理由を問うと、「ドッキリは、ものすごくコストパフォーマンスが悪いコンテンツです。僕らはガチのドッキリにこだわり続けているため、演者にバレないように仕掛けないといけない。あらゆる手練手管を施す必要があるんです」。

「ドッキリは、究極の大喜利」

 たとえば、タレントを呼び出すためには、ニセの企画書が必要になる。出演するメリットがあると感じさせなければいけないため、適当な企画書は作れない。さらにロケをするとなると、ニセ番組用の台本を作り、ロケ車やロケ弁の手配もしなければいけない。その場合、バラエティ班のカメラマンなどがいるとバレる可能性が高まるため、「普段、僕らとはお付き合いがないような情報番組系の技術班を仕込むこともある」という。あくまでこれらはすべてフリ。手間と時間をかけたバックヤードが、表に出ることはない。

「手間と時間をかけたとはいえ、そのドッキリに十分な撮れ高がある保証はありません。そのためドッキリ、特に物理的なドッキリはコストパフォーマンスが悪いわけですね。ですが、ネタばらし後に掛け合いを設けることで、もう一山を作ることができる。仮にドッキリがうまくハマらなかったとしても、その後の掛け合いで笑いが生まれるきっかけになる」

 ネタばらし後の掛け合いで、演者の出演機会、いわゆる「出代(でしろ)」を作り出すことが可能に。テッテレーから掛け合いへ。ドッキリ史における重要なメルクマールだろう。

「僕たちの番組でも、『本当にそれで大丈夫ですか?』ではないですが、中川がネタばらし後に掛け合いをします。とんねるずさんの番組に関わっていた中川だからこそ、こうした掛け合いが分かっている。僕は、ドッキリは究極の大喜利だと思っています。完全に引っかかっている状況にもかかわらずリアクションが求められる。その後も、何が起こるか分からない中でコメントをしなければいけない。瞬発力がないと成立しないんですね」

 そのため、中途半端なことはできるだけしないように努めているという。上から水を降り注ぐなら、キンキンの冷水にする。『なんでこんなに冷たいの!?』。瞬間的な一言が出やすいように、ドッキリならではの配慮があると話す。

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