「運転席からライフルのスコープをのぞき…」OSO18を射殺したハンターが語る“闘い” 猟友会支部長は「内地の人は“共存共栄”と言うけれど」【スクープその後】

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周囲から「もしかしたらOSOじゃないのかい」

 いざ仕留めたものの、300キロ超の巨体ゆえ運搬は困難を極めたという。

「一人ではとても車に積めず、友人のハンターを呼んで私の軽四駆の後部に積んだものの、重みで車の前部が浮き上がってしまった。最終的にもう1人呼んで、3人がかりでトラックに積んで白糠(しらぬか)町にある知り合いの加工業者『馬木葉』まで持って行きました。友人には『もう二度とこんな大物は獲れないべ』と言われ、私も記念に牙をとっておきたかったのですが、『そんなの持って帰らないで』と家族に反対され、一頭ごと業者に渡したのです」

 解体にも立ち会ったという男性は、この時点でOSOとは知る由もなく、

「役場では定期的に『熊を1頭捕獲』などと報告するきまりになっていて、今回も通常業務の一環と考えていました。けれど日がたつにつれ、周囲から『もしかしたらOSOじゃないのかい』と言われ始め、剥製専門店に保管されていた頭部の毛を採取して、うちの職員と一緒に標茶町の役場まで持っていったのです。それが10日ほど後でした」

「面白く思わない人も」

 鑑定の結果、DNAはOSOと一致。18日の夕刻には男性にも一報がもたらされ、土日を挟んで22日には釧路総合振興局が会見を開き、正式発表されたのだが、ここから苦悩が始まったという。

「さんざん農家を苦しめてきたOSOを仕留めてうれしい気持ちはありますが、それは表に出せませんでした。OSOが捕まったことで、私や役場にはさまざまなリアクションが届きました。普段、鹿を撃つ時にも農家から連絡を受けて現場に出向きます。ところが、そもそも釧路町のハンターの中には、私のような役場の人間が先回りするのを面白く思わない人もいるのです」

 加えて今回は、前述のように愛護団体や一般市民からの抗議も相次いだという。

「一番ひどかったのは道外からの電話で、こちらの話を全く聞かないでテープレコーダーのように一方的にまくし立てる。気が済んだら切って、また同じ人が掛けてくるというのが7、8回ありました。また、乳牛被害の当事者とはいえない釧路町の私が撃ったことで、ずっと追い続けていた標茶や厚岸のハンターには申し訳ないという気持ちもある。決して手放しでは喜べないのが、正直な心境です」

「9月の予約も埋まっている」

 地域を救ったハンターをかくも苛(さいな)むとは、実にOSOは罪深い。一方、馬木葉からモモ肉を仕入れてステーキなどを提供している東京・日本橋人形町のジビエ料理店「あまからくまから」の店主いわく、

「お客様には『食べやすくておいしい』と言っていただいています。OSOの肉だと分かってからの反響はすさまじく、9月の予約も埋まっている状態です」

“罪”を重ねた最凶ヒグマのせめてもの“功”というべきか。

 ***

 今年5月に北海道東部で牛を襲ったヒグマは、人前に姿を現さなかったOSO18と異なり、牧場内の建物に侵入していることから「OSOより危険」ともいわれている。人間への被害も懸念されており、今後もクマとの関わり方は慎重に議論すべきだろう。

デイリー新潮編集部

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