海外大物ミュージシャンの“親日伝説” ブルーノ・マーズ「ドンキ」CMに連なる「日本にハマる」パターンとは

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日本ブランドはアフターケアも充実

 チック・コリアが60歳のとき、ニューヨークのジャズ・クラブ、ブルーノートで3週間のお祝い公演があった。その現地でのインタビューでは、静岡県に本社があるヤマハのキーボードに囲まれていた。シンセサイザーのS80とMOTIF8、そしてアコースティック・ピアノだ。

「僕がメロディをつくって演奏すると、楽器が読み取り、まったく同じ演奏を再現してくれます。かなり難しい演奏でも僕に聴かせてくれる。まるでチック・コリアが2人いるみたいにね」

 そう言ってシンセで実演してくれた。ミュージシャンたちは、来日すると自分が信頼する楽器メーカーを訪れる。そこで、自分仕様の楽器をリクエストし、新しいモデルも試している。

 日本製のドラムスも質が高い。世界中のドラマーが憧れた腕利きたちが演奏してきた。スティーヴ・ガッドはヤマハ、TOTOのリーダーだったジェフ・ポーカロはパール楽器、エルヴィン・ジョーンズはタマ(星野楽器)を愛用していた。

 評価が高いのは品質プラスサービスだ。

 日本のブランドは楽器を売るだけではなく、その後もきめ細かくケアする。作品やミュージシャンへのリスペクトがあるからこその、ビジネスを超えたフォローが行われている。その積み重ねによってアーティストたちは日本や日本人に対する信頼を深め、信頼関係が築かれてきた。

日本刀を振り回したペイジ

 もっとも、「旅の恥はかき捨て」の感覚で日本での滞在を満喫するケースもあるようだ。

「日本では、本当に信じられないようなことをいろいろやった」

 レッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジは『奇跡 ジミー・ペイジ自伝』(ブラッド・トリンスキー著、山下えりか訳、ロッキング・オン刊)で、宿で日本刀を振り回した他、数々の蛮行を明かしている。

 さらに女性たちとの一夜を得意げに振り返るミュージシャンも少なくないが、それらはここでは割愛する。

 日本の文化やサービス、国民性を愛してくれるミュージシャンが増えることを願うところである。

神舘和典(コウダテ・カズノリ)
ジャーナリスト。1962(昭和37)年東京都生まれ。音楽をはじめ多くの分野で執筆。『不道徳ロック講座』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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