海外大物ミュージシャンの“親日伝説” ブルーノ・マーズ「ドンキ」CMに連なる「日本にハマる」パターンとは
「吐いたオレを王様のように扱ってくれた」
アーティストに対する日本人のリスペクトに感激して親日化するケースも多い。前述のクイーンやポリスもそれだろう。
“ジャズの帝王”マイルス・デイビスは、自伝で1964年に初来日したときの感動を述べた。
「日本に到着した時のことは、決して忘れないだろう。日本はものすごく遠い国だったから、オレは飛行機の中でコカインと睡眠薬を飲み、それでも眠れなくて酒もガンガン飲んでいた。到着すると、大変な歓迎ぶりで驚いた。オレ達が飛行機を降りようとすると、出迎えの人々は、『日本にようこそ! マイルス・デイビス!』と叫んでいた。なのにオレときたら、そこら中に吐きまくる始末だった」(『マイルス・デイビス自叙伝』マイルス・デイビス他著、中山康樹訳、宝島社)
空港で嘔吐するマイルスを目の当たりにしても、日本人のスタッフは態度を変えなかったらしい。
「彼らはさっと薬を出して介抱してくれ、まるで王様のように扱ってくれた。本当に楽しくて、すばらしかった。あの日以来、日本の人々を愛しているし、尊敬もしている。ビューティフルな人々だ。いつでも大変な歓迎をしてくれるし、コンサートも必ず大成功だ」(同)
今となっては彼の飛行機内の行動に関する問題発言は気になるが、マイルスの日本への愛に疑う余地はなさそうだ。
やはりジャズのレジェンド、ソニー・ロリンズにインタビューしたときに彼も言っていたが、アフロ・アメリカンのミュージシャンは音楽で成功しても、アメリカ国内ではあちこちで人種的な差別を受けていた。それでも、日本人とフランス人は音楽を評価しリスペクトしてくれると話していた。
メイドインジャパン楽器の力
こうしたことに加えて、忘れてはならないのが日本製楽器の持つ力だろう。
日本製の楽器を気に入り、楽器メーカーを気に入り、日本に愛着を持つアーティストも多いのだ。ミュージシャンは、状態のいい楽器を提供されることはものすごく重要。自分の作品のクオリティにかかわるし、ひいては人生にも影響する。
スティングは、今はフェンダーのジャズベースで演奏しているが、一時期は日本のアイバニーズで演奏していた。アイバニーズは星野楽器(本社・愛知県)のブランドだ。
パット・メセニー、ジョージ・ベンソン、キッスのポール・スタンレーもアイバニーズのギターを弾いている。星野楽器は彼らのリクエストに細かく対応し、演奏する音楽に適したオリジナルのギターを提供し続けている。
アイバニーズGB10というギターを使っている時期のベンソンをインタビューしたことがある。“GB”はもちろん、ジョージ・ベンソンのイニシャルだ。
「GB10は私のてのひらにぴったりと収まるギター。ボディも理想のサイズ。ステージで落としてしまってもチューニングの必要がないほどタフ。音は豊かで、私は演奏だけに集中できる」
そう自慢気に話していた。
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