大活躍! 広島「矢野雅哉」と日本ハム「田宮裕涼」 ドラフト下位指名だった二人がアマ時代に見せていた“素質の片鱗”

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 毎年、多くの新星が登場するプロ野球。その中には高い期待を受けて入団してきた選手がいる一方で、下位や育成ドラフトでの指名ながらチームに欠かせない存在へと成長を遂げた選手も存在している。今回は、そんな期待を上回る飛躍を遂げた2人の選手について、アマチュア時代に見せていた“素質の片鱗”を紹介する。【西尾典文/野球ライター】

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セ・リーグのショートでトップの守備率

 1人目は、大卒4年目で、驚異的な守備力を見せている広島の矢野雅哉だ。2020年のドラフト6位。指名順位は高くなかったが、年々出場機会を増やすと、今年は開幕直後にショートのレギュラーの座をつかむ。広い守備範囲と強肩を武器に、たびたび好プレーを連発。セ・リーグのショートでトップの守備率をマークしている。広島の新井貴浩監督も「キク(菊池涼介)と矢野の二遊間はうちの自慢の二遊間」と称賛している。

 昨年まで打率1割台だった打撃は、確実に向上しており、ベストナインとゴールデングラブ賞争いに加わってきそうだ。

 矢野は、兵庫県の育英出身で、高校時代は全く無名の選手だった。3年夏の兵庫大会は9番打者で、目立った成績は残していない。その後、亜細亜大に進学すると、頭角を現す。
 
 筆者が矢野を認識したのは、2年春のこと。このシーズンで、矢野はショートのレギュラーとして、13試合中12試合に出場。規定打席には惜しくも到達しなかったが、打率.333という成績を残した。

 最初に持った印象は、“亜細亜大らしい選手”。同大は、全力疾走をモットーにしており、体が大きくなくても、スピードがあってしぶとい選手が多い。中日や巨人で活躍した侍ジャパンの井端弘和監督や、阪神で5年連続盗塁王に輝いた赤星憲広らは代表的なOBだ。

強肩を生かした高い守備力

 矢野には“亜細亜大らしさ”に加えて、肩の強さという強力な武器があった。

 2年秋は打率0割台、3年春は1割台と、打撃は全く振るわなかったにもかかわらず、強肩を生かした高い守備力でポジションを譲らなかった。三遊間や二遊間の深い位置で捕球したあと、驚くような送球でアウトにしてチームを救うシーンが多く見られた。

 当時、ベテランスカウトとこんなやりとりをした記憶がある。

 矢野の素晴らしい守備を見たスカウトが「矢野は高校時代から評判だった選手なのですか」と尋ねてきた。無名だったと伝えると、「こういう選手を無名だった高校時代に見つけて、ドラフトで指名しないといけないんですよ。あれだけの守備、送球ができる選手は、プロにもなかなかいない」と熱っぽく語っていた。

 この時点で、矢野はドラフト指名が確実視されていたわけではなかったが、3年秋に首位打者を獲得するなど、打撃面で著しい成長を見せたことがドラフト指名につながる。

 広島入団後は、レギュラーというよりか、内野のバックアップ要員のイメージを持っていたが、4年目でレギュラーの座をつかんだ。広島のチーム関係者によると、持ち味の守備力はもちろん、とにかくよく練習するとのこと。猛練習で知られる広島のチームカラーにマッチしていたようだ。

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