「日本人が骨折しにくい理由は大豆」「認知症予防に豚汁」 食の最新知見を専門家が徹底解説!

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「魚の摂取量が多いほど認知症リスクが下がる」

 さらに、アンチエイジングに励むのであれば、「老化の始まり」となる、ある臓器を若返らせる食材の摂取が欠かせない。医学界にはこんな名言があるという。

〈人は血管とともに老いる〉

 愛媛大学大学院の抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授で、若返り研究の権威である伊賀瀬道也氏が言う。

「今では、イワシやサバなどの青魚に含まれる飽和脂肪酸の『EPA(エイコサペンタエン酸)』には血液をサラサラにする効果があり、動脈硬化の予防に役立つことが広く知られていますが、世界五大医学誌の一つ『ランセット』に、その効果が掲載されたのは2007年。20年ほど前は、私を含めた一部の循環器系の専門家が青魚の健康効果を訴えていたもののなかなか浸透しませんでした。実は、青魚が体に良いというのは、意外と最近の科学的知見といえるのです」

 この“新しい健康食材”である青魚には血液をサラサラにしてくれる以外にも、さまざまな効果がある。

「EPAは紫外線による肌老化も防いでくれますし、やはり青魚に含まれることで知られるDHA(ドコサヘキサエン酸)には脳機能を高める効果もあり、東北大学などの研究によって、魚の摂取量が多いほど認知症リスクが下がることが明らかになっています」(同)

豚汁が腸を整える理由

 そう、人生100年時代の今、がんを抜いて「なりたくない病気」の第1位となっているのが認知症だ。管理栄養士で、札幌保健医療大学大学院教授の川口美喜子氏は、

「食事での対策を含め、認知症を完全に予防することは残念ながらできませんが、認知症発症の大きな因子は生活習慣病です。そのため、認知症を予防するには、生活習慣病にならない食事が第一歩となります」

 として、こう続ける。

「まず血圧の急激な上下動を防ぐために、麺だけ、パンだけといった『糖質オンリー』の食事は避け、また色鮮やかな野菜を食べることで抗酸化作用の高いファイトケミカル(植物性化学物質)を取る。そうした上で、腸を整える食事をしましょう。脳腸相関という言葉が示すように、腸の健康は脳の健康にもつながります。腸にとって良い食事には、『腸で働く善玉菌を多く含む食べ物(プロバイオティクス)』と『善玉菌を育てる食べもの(プレバイオティクス)』の二つを合わせた『シンバイオティクス』という考え方がとても大切です」

 これを踏まえて、川口氏が説く「認知症予防料理」とは――。

「発酵食品でありプロバイオティクスの代表格であるみそ、食物繊維が豊富でプレバイオティクスであるゴボウやコンニャク。これらが一緒に取れる豚汁がお薦めです」

 後編【「しょうが焼きと豚しゃぶ、どちらが栄養価が高い?」「ヨーグルトを食べるべき時間帯は…」 気になる食の疑問を専門家が徹底解説】では、食の内容だけではなく、「どう食事を取るべきか」について徹底解説している。

週刊新潮 2024年8月15・22日号掲載

特集「『12人の専門家』の叡智結集 『何を』『どう』摂るか 長命のための『最強の食』決定版」より

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