「日本人が骨折しにくい理由は大豆」「認知症予防に豚汁」 食の最新知見を専門家が徹底解説!
骨は脆いのに骨折しにくい日本人
健康寿命の延伸を邪魔する“敵”は、無論、がんだけではない。とりわけ中高年にとって、元気に歩き続けられる足腰を保つことは重要だ。自由に歩けなくなると家に閉じこもりがちになり、その先にはフレイル(要介護手前の虚弱状態)が待ち受けている。
「大豆には、素晴らしい機能性成分が多く含まれています」
と、食品生化学が専門である東京大学名誉教授の佐藤隆一郎氏が説明する。
「中でも、『ゲニステイン』という種類のイソフラボンが豊富で、このゲニステインは女性ホルモンに近い活性を示します。そして、骨粗鬆症は大腿骨頸部骨折を招きやすく、寝たきりの大きな原因となりますが、その予防にゲニステインが寄与しているのではないかと考えられているのです」
骨粗鬆症患者の80%以上は女性であり、その主な原因は閉経後の女性ホルモンの低下だとされている。
「欧米に比べると乳製品の摂取量が少ない日本人はカルシウムが不足する傾向にあり、事実、欧米人女性と比較すると日本人女性の骨密度は低く、骨が脆い。ところが、日本人の骨折率は欧米人よりも低いことが分かっています」
骨は脆いのに骨折しにくい。「ジャパニーズ・パラドクス」と呼ばれる矛盾である。
「この謎を解く鍵として、イソフラボン説が語られています。閉経後に女性ホルモンの分泌が激減した分を、女性ホルモン様活性を発揮するゲニステインが補ってくれるという考え方です。豆腐、みそ、納豆と、世界に誇るべき大豆食文化のおかげで、ゲニステイン摂取量の多い日本人女性は比較的骨折が少ないと考えられます」
チーズは優れた「抗サルコペニア食品」
また、フレイルの前段階として、サルコペニア(加齢に伴う筋肉減少症)にも注意が必要である。
「近年、サルコペニア予防のために、高齢者であってもタンパク質を積極的に摂ることが推奨されています。しかし、過剰な摂取は腎臓に負担をかけてしまう。そこで、タンパク質の『量』ではなく、『質』がより重要になってきます」
こう説くのは畜産物利用学、応用微生物学を専門とし、乳製品に詳しい東北大学名誉教授の齋藤忠夫氏だ。
「チーズには『ロイシン』が豊富に含まれています。タンパク質はアミノ酸で構成されているわけですが、そのうち体内で作ることができず、食事から摂取するしかないものを必須アミノ酸と言います。ロイシンは、9種類の必須アミノ酸の一つです。そして、必須アミノ酸の中でも筋肉量を増やすのに欠かせないのがバリン、イソロイシン、そしてロイシンで、特にロイシンが最も筋肉の生成に寄与することが分かっています。従って、チーズはとても優れた『抗サルコペニア食品』といえるのです」
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