「人間は44歳と60歳で急激に老いる」は本当か…専門医は「老化に節目があるのは事実」「タイミングを考えて人間ドックを受診してほしい」
人は徐々に老いるのではなく、特定の年齢で急激に老化する──。衝撃的な研究成果が発表されると、日本の芸能界からも驚きの声が上がった。アメリカのスタンフォード大学とシンガポールの南洋理工大学の研究チームは8月14日、オンライン科学誌「ネイチャー・エイジング(Nature Aging)」に「人間は急に老いる時期が2回ある」と発表したのだ。
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研究チームは108人を対象とし、数か月ごとに血液や皮膚などのサンプルを採取。最長で7年間の追跡調査を行ったところ、“44歳と60歳前後”で身体機能の低下をはじめとする急激な老化が認められたという。担当記者が言う。
「この発表により、老化の概念が全く変わってしまいました。これまで『人間は年を重ねるごとに老いていく』というのが常識でした。ところが今回の発表によると、例えばコーヒーや紅茶、緑茶に含まれているカフェインを代謝する能力は、40歳前後で一度、著しく低下します。しかし、その後は50代後半まで顕著な変化を示しません。そして60歳前後になると、再び代謝は大きく低下するのです」
お笑いタレントの有吉弘行は18日、パーソナリティーを務めるFMラジオ番組「有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER」に出演。この研究を取り上げ、「昔の人はすごくてさ、結局厄年とか還暦とかの辺なんだよね。そこでグッと体力が落ちるから“気を付けろ”ってことなんだろうね」と感心しきりだった。(註)
厄年と老化の関係
東京都品川区で秋津医院を開業している秋津壽男氏は、1977年に大阪大学工学部を卒業し、社会人生活を送った後、和歌山県立医科大学医学部に再び進んだという異色の経歴で知られる。
「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系)でもおなじみだが、『【お試し版】100歳でも元気なのはどっち? 長生きする人・しない人の習慣――病気と医療編』(あさ出版)など、多数の著書がある。
毎日、様々な患者と接している秋津医師に、我々は研究チームの発表をどう受け止めるべきか取材を依頼した。
「男性の本厄は数えで25歳、42歳、61歳の3つであり、これは医学的に見ても非常に示唆的です。確かに人間には20歳、40歳、60歳という節目で老化していくと私も実感しています。順に見ていきましょう。まず生物としての人間は20歳で頂点を迎えます。これから先は老いるしかありません。よく20代の社会人や大学生が高校生を見て『若くていいなあ』と感嘆しますが、医学的には決して間違っていないのです」
30代を終えると、いよいよ“老化”が現実味を帯びる40代となる。研究チームが「44歳で老いる」と発表した通り、秋津医師の元を訪れる患者も増える。
「本厄の42歳という年齢は“しに=死に”という語呂合わせも影響を与えているようです。ただ、日本人は人間の生死を見つめ続け、『40代は健康に注意したほうがいい時期だ』と経験から分かっており、それを厄年という概念で表したのでしょう。臨床医の観点から40代は『まだまだ健康だが、精神的なストレスが体調に影響を与えることもある』時期だと言えます。職場で出世してしまったが故の重圧、子供の成長に対する不安など、様々なストレスで特に胃腸に不調を来す人が目立ちます」(同・秋津医師)
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