【オリエント工業が事業撤退】「人形」と不倫した48歳夫の告白 亡き婚約者を重ねた「ゆっこ」との出会い

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【前後編の前編/後編を読む】「人形」と不倫した48歳夫 アパートを借り重ねた逢瀬…知った妻の“ドン引き”

 大人向けドールを手がける老舗メーカーのオリエント工業が、約47年続いた事業の終了を発表した。代表・土屋日出夫氏が引退するためだという。このニュースが大きな話題になっている理由には、同社が手がける「人形」でなければならない、切実な事情のある人が多いゆえだろう。男女問題を30年近く取材し『不倫の恋で苦しむ男たち』などの著作があるライターの亀山早苗氏も、以前、そんなひとりの男性を取材している(2021年12月8日配信記事を元に再編集しました)。

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 人には誰しも秘密のひとつやふたつはある。だがそれさえも暴かれてしまうのが夫婦関係かもしれない。心で思うことは内緒にできても、行動している現実は完全に秘密にすることはできないからだ。

 東京郊外に住む安藤祥平さん(48歳・仮名=以下同)が結婚したのは13年前。35歳になっても結婚する気配のない彼を心配した親戚が、知り合いの女性を紹介してくれたのだ。

「結婚にはあまり興味がなかったんです。といって女性に興味がないわけではなかったけれど」

 そう言って祥平さんは微笑んだ。黙っているといかついイメージだが、面と向かうと目がやさしい。笑うとさらにその目尻が下がって、人懐こい感じになる。

「ただ、積極的に女性に自分からアプローチするタイプではないから、とにかくモテない。それでも大学時代に心底好きになった人はいたんです」

 同じ学部だったから、よく隣り合って講義を聴いていた。仲間内でしょっちゅう集まっていたが、3年生になったある日、彼は思いきって彼女に「好きだ」と告げた。彼女は「やっと言ってくれた」と笑顔を見せた。今より女性からのアプローチはしづらい時代だったかもしれない。

「周りも盛り上がっちゃって、早く付き合えばよかったんだよと言われて。就活もお互いに励まし合ってがんばりました。ふたりともなんとか希望の会社に入れたんですが」

 彼はいきなり言葉を切った。決定的な言葉を吐けないように見える。間があいた。

「就職して3年たったら結婚しようと言っていたのに、2年たったところで彼女がいなくなったんです」

 事故で亡くなったのだった。「自分もあのとき、半分死んだ」と彼はつぶやいた。

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