このままでは日本の「アルゼンチン化」もあり得る…小林慶一郎・慶大教授が指摘する「金利のない世界」の甚大な副作用
“インフレを起こせばなんとかなる”
また最新の研究では他の副作用も指摘されている。
「一つは金利が下がり、地価が上がることによる弊害です。例えば、スタートアップに優れた事業のアイデアがあったとしても、低金利のため地価は上がっていて、アイデアを実現するための工場を作る際の大きなコストになることが考えられます。するとスタートアップの資金繰りが苦しくなるという事態になる。さらに、他の研究では、その業界の2番手、3番手の企業が設備投資をしなくなる、と指摘するものもあります。業界のリーディングカンパニーは低金利で資金を調達して、ガンガン投資をします。2番手3番手も資金を借りやすいので、同様に資金を調達します。するとリーディングカンパニーとの競争が激化するだけで意外に利益が上がらない。そのため、投資を控え、業界におけるリーディングカンパニーの独占が進み、産業としての生産性が下がるというものです」
ほかに、低金利を長期間続けた場合の問題として政治家や官僚の「マインドの変化」が挙げられる。
「異次元緩和が始まり、もう10年以上経ち、さらに2016年からは長期金利もゼロ付近に抑えられてきました。10年物国債の金利が低いわけですから、16年ころから国債の利払い費が減少するということが起こっている。この間、特に若い政治家の意識が大きく変わったと感じています。“インフレを起こせばなんとかなる”といったリフレ的な考えや一時はMMT(現代貨幣理論)も流行しました。今でも自民党の若い議員の中にはそうした考えを持つ人が多い。“最終的に日銀が国債を引き受ければなんとかなる“といった財政規律を軽視する考えですね。それは財務省以外の官僚も同様で、最近になり、財政の歯止めがかからなくなるということは起こりつつあると思います。例えば、コロナ禍での給付金などでかなりの財政出動が行われましたが、感染症対策という特殊な状況下であっても、予算の出し方は他国に比べてもかなり激しかった」
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