このままでは日本の「アルゼンチン化」もあり得る…小林慶一郎・慶大教授が指摘する「金利のない世界」の甚大な副作用

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 日本銀行総裁が10年にも及ぶ異次元緩和を続けた黒田東彦氏から植田和男氏に代わり、金融政策は徐々に正常化しつつある。果たして“金利のない世界”は日本に何をもたらし、今後、“金利のある世界”へと回帰することができるのか。『日本の経済政策 「失われた30年」をいかに克服するか』(中公新書)を上梓した小林慶一郎慶應大学教授に訊いた。

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低リスクの“ゾンビ事業”を選んでしまう

 日本は日銀の黒田体制下で超低金利時代が長く続いた世界的にも稀有な国である。

 2016年1月、日銀は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入し、さらに同年の9月に短期金利だけではなく、長短金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)を取り入れた。

 結果、超低金利の時代が現在まで続くことになったが、植田体制で、YCCの解除や利上げが行われ、ようやく“金利のある世界”が戻りつつある。

 では、この間の超低金利は日本経済に何をもたらしたのか。小林氏は長期の超低金利が低成長を招くかもしれない、と指摘している。

「しかし、これは通説というわけではありません」

 と小林氏が語る。

「当然、金利を低下させるということは、お金を借りやすくして、景気を刺激するわけですから、経済を成長させるための政策として行われてきたわけです。ただし、短期なら有効ですが、長期にわたり低金利を維持すると副作用があると以前から懸念されていました」

 例えば、「ゾンビ企業」「ゾンビ事業」の蔓延はその一つだという。

「本来なら倒産してしまうような生産性の低いゾンビ企業にも銀行から資金が貸し出されることになります。短期的には失業を防ぐ効果があったとしても、長期的に見ると全体の経済成長率を下げ、経済の活力が失われていくことにつながる。また、低金利で資金を調達できるので、企業の中でも低収益・低リスクの事業を継続することが可能になります。高金利なら早く資金を返さないといけないので、低収益の事業を続けることはできませんが、低金利の場合、企業はチャレンジせずに低リスクの“ゾンビ事業”を選んでしまうことになる。実際、そういう事態になっているという話は企業の方から聞きますね」

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