元”練習生”が現役K-1チャンピオンを告発「暴力で脅され日払いバイトの稼ぎを上納させられた」王者は「頼まれて生活の面倒を見ていただけ」と反論

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金子側の反論

 金子はAさんの訴えにどう答えるのか。前編でも伝えたが、21年10月に起きた大怪我については「故意ではなく練習中に起きた事故」「なぜ3年経っていきなり被害を訴え出したのかわからない」と答えた。

 またAさんが金子に送っていた自撮り画像に写っていた傷については、

「彼は他のジムにも通っていたので、他で負った傷だと思う」

 と否定した。

 では、Aさんが倒れるまで腹部を執拗に実戦用グローブで殴り続けた動画についてはどう答えるか。

「あれは彼がトレーナーになりたいと自分から言い出して始めたことです。パンチの質を確かめたい、自分の体で受け止めてみたいと言うので、私も自分の練習にもなるのでやっていました。顔は狙って打っていません、腹にはちゃんとプロテクターを入れていました。実際、彼は他の人にもこのようなパンチを受けるトレーナー仕事をやっていました」

 異常なくらいLINEで仕事や収支を管理していたことについては、

「それも本人から申し出たことです。彼には借金があった。けれど寝坊したりしてすぐクビになるので、私が日払いバイトを紹介した。そして彼から生活を管理してほしいと頼まれ、あのような形で申告させていたのです。私は彼から金を取ったことはありません。むしろ、彼が私のガウンやトレーニング道具を持ったまま突然消えたので大きな損害を受けました。チケット代など私に対する未払い金も残ったままです」

 そして、代理人の萱野唯弁護士を介して証拠として動画やLINEを送ってきた。動画はAさんが公園内で20代と思しき女性にパンチの指導を行っている内容で、Aさんは、

「僕がサンドバッグになるから僕の体に打ち込んでください、大丈夫です」

「僕も実際、直に受けることによって(パンチの)質を確かめられます」

 などと親身にレッスンしながら、女性からのパンチを受けていた。

 LINEは大怪我を負った後も、Aさんが金子に「優勝おめでとうございます!! 凄く感動して刺激になりました」「今日の反省点もお伺いできますか?」などとメッセージを送っているもの。「暴力で支配するような関係ではなく、良好な師弟関係だったことを証明するものです」(萱野弁護士)。

 怪我を負う前ではあったが、「あのマス(スパーリング)の事を思い出すと恐怖心がなくなりましたね!」と金子との練習を前向きに捉えているように見えるAさんのメッセージも含まれていた。

 さらに文書で再確認を求めたところ、下記のような文書が代理人経由で届いた。

〈金子氏とA氏とは10年ほど前にジムで出会い、ともにトレーニングを行う関係でした。A氏は、プロではないものの、プロを目指して多数の大会に参加している選手です。階級はA氏が金子氏より10キロ上であり、アマチュア王者として金子氏以外のプロ選手ともスパーリングを行っていました。

 A氏がジムを退会した後には、屋外で自主トレーニングを行うこともありました。しかし、あくまでトレーニングであり、一方的に暴行した事実はありません。A氏は自ら積極的に参加し、金子氏のアドバイスに対して感謝のメッセージを送ることもあり、これを裏付けるLINEのやり取りや動画なども残っています。

 2021年10月のトレーニング中にハイキックが顔面に当たってしまい怪我を負わせてしまったことは事実であり、申し訳ないと思っています。しかし、あくまでアクシデントによるものです。スネ当てはしていましたし、故意に行なったものではありません。

 付き人のような関係であったことは事実ですが、上納金等の名目で金銭を受領したことは一度もなく、むしろ作業を依頼したときにはその都度、報酬を渡していました。2人の関係性については、同人らの練習の様子を見ていたジムの関係者も、「怯えている相手にあんなに声がけしないと思う」旨の証言をしています。

 トレーニングの際には、8オンスのグローブを使用することもありましたが、これはアマチュア時代から変わっておらず、暴行の事実はありません。スパーリングの際には14オンスを使用していましたし、金子氏がチャンピオンになってからはスパーリング自体を行っていません。A氏が自身がトレーナーとしてプライベートレッスンをしていた際に、自らの腹部にパンチさせている動画も残っています。

 本年に入り、金子氏からA氏に対しては、立替金等の件で、弁護士を通じて請求を行っているところでした。その際にはお父様からも謝罪を受けています。お父様より、精神的にかなり不安定であるため対応を待ってほしいと返答があったため、回答を待っていたところ、それ以降は何ら連絡なく、突如として週刊誌から連絡を受けたという経緯であり、非常に困惑しています。

 以上のことは警察の任意の事情聴取においても全てお話していますが、特に事件性があるとは言われておらず、聴取も1度で終了しております〉

 この金子の反論に対しAさんはさらにこう反論する。

「確かに金子が知り合いの女の子を連れてきて、トレーニングしろと言うので一度だけ公園でトレーニングをやったのは事実です。だから私がトレーナー業をしていたと言いたいのでしょうが、そもそも女性のパンチとチャンピオンのパンチは全然違うでしょう。腹にプロテクターを入れさせてもらえたのも最初だけです。途中からは『どれくらい効果があるかわからないから外せ』とプロテクターなしでずっと彼のパンチを受けていたのです」

 支配関係になかった証拠とする複数のLINEについても、

「マススパーリングについて良かった、と送っているものは怪我をする前のものです。確かに怪我した後も『優勝おめでとうございます』とメッセージを送ったりする関係でした。ただあの頃は被害を受けながらも、金子についていって格闘技が強くなりたいという思いが残っていたのです。借金はあったことは事実ですが、金子に上納するようになってから生活が苦しくなってできたものです」

 立て替え金請求の件については、父が代わって反論する。

「ボロボロになった息子を実家に連れ帰った後、金子の代理人と名乗る弁護士(註・現在の代理人とは別人)から、息子に預けたトレーニング用具などが返却されていないとして『300万円』の弁償を求めるような内容の通知書が届きました。それを見てびっくりして、息子が迷惑をかけたのかもしれないと弁護士に電話を入れたのは事実です。

 だだその後息子に詳しく話を聞くと、全く違う内容だった。金子は息子に自分の私物を管理させるよう押し付け、すごい量になっていったのでわざわざ月々5500円払ってトランクルームまで借りていたとも聞いた。その後、すぐに金子の私物は送り返しました。

 息子は『金子から雑用をやらされたが、最初の1、2度は3000円もらった。その後は全てタダ働きだった』と話しています。何より息子は長期間、暴力で脅され金を巻き上げられてきたのです。息子から真実を聞いて代理人に再度電話して全てを打ち明けたら、しばらくして『辞任しました』という通知が来ました」

 K-1の運営会社「M-1スポーツメディア」にも取材を申し込んだが、「お答えすることはありません」とのことだった。

 近く千葉県警は金子を書類送検する予定で、その後、検察庁が起訴か不起訴かの判断を下すことになる。

前編では、Aさんが金子と出会って「人間サンドバッグ」扱いされるまでの経緯、鼻と顎を骨折する大怪我を負った“恐怖のスパーリング”や度重なる暴行で変形してしまった顔面について以前の写真と比較しながら詳しく報じている。

※この記事のなかで、今回の報道と無関係な方の情報が掲載されていました。記事作成時に確認が行き届かず、ご迷惑をお掛けしてしまったことをお詫び申し上げます。

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