「吉永小百合さんのシルクの下着がぼろぼろに」 樹木希林と温泉宿ではしゃいだ夜…撮影地のスナックママが追憶

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 来年は「昭和100年」。その節目を記念して、時代を彩ったスターたちと温泉をテーマにした一冊『宿帳が語る昭和100年 温泉で素顔を見せたあの人』(潮出版社)が刊行された。著者である山崎まゆみさんが、宿の主人や女将(おかみ)たちから聞いた秘話を厳選。樹木希林と吉永小百合が映画撮影の際に滞在した温泉宿で見せた、知られざる素顔とは。【山崎まゆみ/温泉エッセイスト】

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湯村温泉「朝野家」(兵庫県)

 雪深い、山陰の小さな温泉地――。

「今なら大浴場に行けるよ、行こうか」

 樹木希林は、そういたずらっぽくスナックのママを誘ったという。

「いいな~、大浴場に行けて」

 と、横にいた大女優・吉永小百合は人目を気にして、二人を見送った。

 誘われたスナックのママは、こう回想する。

「大浴場は誰もいなくて、二人で温泉に入り、背中を流し合いました。希林さんの肌はとても奇麗でした」

 湯から上がって脱衣所で洋服を着ている時、ふと、樹木が呟いた。

「この前ね~、お母さんの下の毛に白髪を見つけたの。私たちも年を取ると出てくるのかね」

 当時30代で、樹木より三つ年下のスナックのママは「私らは、まだ若いから、そんなこと考えんでいいんよ」と返した。名脇役で名をはせた彼女との心の距離の近さが分かる逸話だ。

「裏表がない人で、喋り方もテレビの通り」

“スナックのママ”とは、ドラマや映画で話題となった「夢千代日記」の撮影中、演者やスタッフが滞在した兵庫県湯村温泉「湯村観光ホテル(現・朝野家)」の地下に併設されていたスナック「古城」の谷口佐智子さんのこと。夕食を終えると、樹木や吉永、それに名取裕子、田中好子といった出演者だけでなく、作・脚本の早坂暁も、この店へと通ったそうだ。

 再び佐智子ママに聞くと、

「希林さんはあのまんま。裏表がない人で、喋り方も、テレビのあの通りなんですわ。私は大好きやった。ファンからもらった柿を『これ、持っていかない?』って、私やスタッフに振る舞ってくれました。頂き物を独り占めするようなことはなく、いつも周りの人に気を使っていましたよ」

 佐智子ママは、樹木にはこんな器用な一面もあったと明かす。

「希林さんは、共演した女優さんからもらった仕立てのいい服を、自分で手直ししていてね。『これ、自分で縫ったのよ』って見せてくれたことがあったけど、『ここは見ないでね~。裏と表を間違えて縫っちゃった』って。裏だと思い込んで縫ったら表だったみたい」

 このように、いつも周囲に笑いを振りまいていた。

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