「無理を言わない志村さんが唯一頼んできたことは…」 志村けんが毎年訪れた福井の温泉宿、女将が明かす飾らない素顔
混みあう年末年始を避ける気遣い
ただ「べにや」では、子ども好きの一面を見せた。
「うちの子どもたちをかわいがってくださいました」
と、女将が見せてくれた写真には、志村と子どもたちがじゃれあう姿がある。
「うちの4人の子どもにお年玉を下さいました。名前を入れたぽち袋まで用意してくださったんですよ。子どもたちも大喜びです」
女将は、志村の人柄を語り続ける。
「志村さんはご自分のことはご自身でやられましたが、仮に私に何かを頼まれたとしても、『俺のことを先にやって』とおっしゃる方ではありませんでした」
混みあう年末年始ではなく、少し落ち着く1月3日か4日に来ることにも、気遣いが表れている。
女将はこうも言う。
「うちでお正月を過ごすことを恒例としているお客様に割って入り、予約されることはありませんでした」
「再建したら必ず一番最初に行くからね」
決して無理を言わない志村が、唯一、女将に頼んでくることがあった。
「お帰りになる時に、必ず私に『女将、来年は雪を降らせておいてね』とおっしゃるんです。私が『はい、かしこまりました』と申しますと、安心したようにほほ笑まれました」(同)
希代のコメディアンが定宿にした「べにや」は明治17(1884)年創業。3000平米の日本庭園を囲む2階建ての建築物は国の登録有形文化財に指定されていたが、平成30(2018)年に火災が起きて全焼。志村は「再建したら必ず一番最初に行くからね」と、わざわざ電話をかけてきた。
しかし、再建には3年かかり、令和2(2020)年にコロナで亡くなった志村の再訪はかなわなかった。
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