マーティ・フリードマンが明かす、工藤静香やWinkの『B面』が海外で人気のワケ 作品も歌声も「1ランク上」と感じた昭和アイドルとは

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マーティが一目置いている人物とは

 マーティの話を聞いていると、海外から見た邦楽の魅力がリアルに伝わってくる。こうした動きは、今後も広がるのだろうか。

「僕がJ-POPを発見した‘00年代は、まだ音楽をネットで自由に探せなかったので、のめり込むにはよほど大きなモチベーションが必要でした。でも、今は簡単に日本の音楽に触れることができるので、絶対にもっともっと広がると思う。だって、日本の音楽はどんどん面白くなっているんですよ。日本は音楽に対する冒険心が最上級だと思います。

 例えば、Official髭男dismはプログレ(プログレッシブ・ロック。進歩的・革新的なロックを意味する)の要素がとても強いし、Mrs.GREEN APPLEに関しても、コード割が複雑で、奇妙なメロディーのつなぎ方とか転調の仕方がとても多いのに、それがヒットチャートの上位になっているでしょ?そんな国は世界中探しても、日本しかありませんから、“なに、この国!?”って、みんなが関心を持つんです。

 そして、昭和アイドルの曲はサウンドや音色、アレンジなど、元ネタがバレバレなものもありますが(笑)、そのメロディーのセンスやコードの使い方は‘24年になっても変わらない。今のYOASOBIやAdoさんでも、昭和歌謡のエッセンスが確かに使われているんですよ。つまり、日本人が絶対に無視できない様式美がずっと生きているんです」

 なお、マーティは“ストライクゾーンではない”という昭和歌謡の歌い手の中でも、一目置いている人物がいるという。

「松田聖子さんです。彼女の作品は曲作り、全体のプロデュース、そして何より歌声が、当時の一般的な作品に比べ、1ランク上だといつも感じます。だから今でも日本中で愛され、誰からも尊敬されていて、この時代を代表する音になっているんでしょうね」

 ちなみに、松田聖子のシングルB面は、「Eighteen」「制服」「レモネードの夏」、そして当時もヒットした「SWEET MEMORIES」など、Spotifyでも100万回以上再生されているヒット曲が非常に多い。

 最後に、マーティにサブスクの魅力をあらためて尋ねてみると、

「やっぱり、シングルのB面曲でもアルバムの中の隠れた曲でも分け隔てなく聴けるのが良いんじゃないですか。リアルタイムで聴いていなかったとしても、今からでも、新しい想い出を作れるんですから。だから、日本の人はこのサブスク時代を前向きに捉えるべきだと思いますよ」

 シングルのB面曲は、ベストアルバムに収録されたり、コンサートの定番になったりしない限り、発売されたきりで埋もれてしまう。テレビの懐メロ番組でも、当時のA面を中心とした歌番組のプレイバックばかりで、A面とB面の格差はますます広がってしまいがちだった。

 それが、こうしたサブスクの環境下ではフラットに評価され、初めて多くの人に広がるという状況はとてもドラマティックだ。ひいては、当時何らかの事情ですれ違ってしまった友達や仕事仲間など、人間関係においても、そんなフラットな視点が再会のきっかけになるかもしれないとさえ感じてくる。それほどまでに、今、世界中で起こっている日本の音楽の高評価はミラクルな出来事なのだ。

【前編】では早見優、岡田有希子ら昭和アイドルの「B面曲」人気を分析している。

(取材・文:人と音楽を繋げたい音楽マーケッター・臼井孝)

【INFORMATION】
マーティ・フリードマン 『ドラマ―軌跡―』
(収録曲一覧)
1.イルミネーション
2.ソング・フォー・アン・エターナル・チャイルド
3.トライアンフ(オフィシャル・ヴァージョン)
4.スリル・シティ
5.ディープ・エンド
6.デッド・オヴ・ウィンター
7.ミラージュ
8.ア・プレイヤー
9.アカペラ
10.ティアフル・コンフェッション
11.アイシクルズ
12.2レベルデス(デッド・オヴ・ウィンター)(スパニッシュ・ヴァージョン)
13.ミラージュ(ギター・カラオケ・ヴァージョン)

LIVE 2024「DRAMA Volume 2」
【開催日】8月24日(土)
[1st.show]開場15時30分/開演16時30分
[2nd.show]開場18時30分/開演19時30分
【会場】東京・丸の内ライブレストラン「COTTON CLUB」

マーティ・フリードマン
ギタリスト、作曲家、プロデューサー。アメリカのワシントンD.C出身。1990年にヘヴィメタル・バンドのMEGADEATHに加入し、ギタリストとして活躍。同バンド脱退後の‘04年に日本に移住し、以降、J-POPへの楽曲提供やギター演奏への参加、J-POP評論、さらにはTVや映画への出演など多面的に活動中。‘23年2月には、日本武道館にて24年ぶりにMEGADEATHと共演。‘24年5月、4年ぶりとなる本人名義のアルバム『ドラマ -軌跡- 』を発表。8月24日には、リリース記念ライヴの追加公演を東京・COTTON CLUBにて開催。

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

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