マーティ・フリードマンが明かす、工藤静香やWinkの『B面』が海外で人気のワケ 作品も歌声も「1ランク上」と感じた昭和アイドルとは

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【前後編の後編】

 令和になって、昭和のシティポップやアニメソングなど、日本の音楽が海外でヒットする事例が数多く見られるようになった。さらに、ここ数年は、昭和アイドルのシングルB面曲がA面曲以上に聴かれているケースも増えてきている。そこで、洋楽・邦楽ともにその魅力を熟知している、J-POPマニアのギタリスト、マーティ・フリードマンに、人気の「B面」5曲を聴いてもらった。インタビュー前編では早見優、河合奈保子、岡田有希子の3曲について語ってもらったが、今回は、引き続き4曲目から尋ねてみよう。

ケース4:工藤静香「夏がくれたミラクル」

 1988年6月発売のシングル「FU―JI―TSU」のB面。A面は、工藤静香が大ファンと公言している中島みゆきを作詞に初起用した効果でオリコン最高1位、累計25.3万枚のヒットとなった。対するB面は、前作「抱いてくれたらいいのに」に続いて松井五郎を起用し、夏の恋の輝きを描いた爽快なアッパーチューン。作曲・編曲はA・B面ともに後藤次利が手がけている。

‘24年7月末時点のSpotifyでの再生回数は「FU―JI―TSU」が118万回に対し、「夏がくれたミラクル」が72万回とやはりA面が強いが、海外リスナーに限ると「FU―JI―TSU」は41万回、「夏がくれたミラクル」が60万回と、大幅に逆転している。

「僕が昭和、特に‘80年代の日本のポップスが少し苦手な理由は、アメリカのポップスのモチーフを真似しているものがとても多いからなんです。海外のバンドそっくりのギターフレーズや、8ビートのスタッカートを活かした“デッデッデッデッデッデッデッデッ”というリズムパターンなどが特徴的ですね。

 ただ、この『夏がくれたミラクル』は、そんな中でも良い部分がたくさんあります。まず、サビのボーカル・アレンジがとっても豪華で、聴いていると、幸せな気持ちになります。また、アメリカ人になじみのコードがいくつか使われつつも、その使われる順番や組み合わせがまさに“ミラクル”で、聴いたことがない。さらに、工藤さんのボーカルは、この時代のアイドルの中ではかなりうまい と感じましたし、彼女の良さが顕著に出ているのがB面だと思います」

 また、当時、国内でA面「FU―JI―TSU」がヒットした要素として、別れた恋人と偶然出会ってしまって“不思議顔”をされてしまうという中島みゆきならではの歌詞と、工藤静香の歌声の相性が抜群に良かったという点はとても大きいだろう。

「そう、でも海外では、歌詞の良さという武器を知らずに、音楽そのものを楽しむんでしょうね。僕はA面の『FU―JI―TSU』も知らなかったので、取材を受けるにあたり、どちらも完全にフラットな状態で聴いたのですが、B面の方が印象に残っています。特に『夏がくれたミラクル』は、サビの後、2番のAメロに行く前にブレイクダウン(1つの楽器でリズムのみを演奏するパート)が入っていて、これは当時でも今聴いても、かなり冒険的だと思います。こういうアイデアはJ-POP全体にも見られる特徴で、僕も大好きです」

 ちなみに、本作に限らず、‘87年から‘93年の工藤静香作品は、「日本の名ベーシスト」と呼ばれる後藤次利がほぼ全曲の作曲とアレンジを手がけている。

「後藤さんとは、『ラストアイドル』というアイドルグループのオーディション番組の企画でご一緒しました。大物プロデューサー5人が5つのグループをそれぞれプロデュースし、シングルの表題曲をかけて対決したのですが、後藤さんが作曲、僕がギターを担当した曲で勝ち抜いたのが嬉しかったですね。後藤さんは、ベーシストかつ作曲家というのがとてもユニークで、日本の音楽において重要な存在だと思います」

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