なぜ?早見優、岡田有希子ら昭和アイドルの『B面曲』が海外でヒット… “J-POPにハマって移住”のギタリストが魅力を分析

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ケース3:岡田有希子「PRIVATE RED」

‘85年1月発売のシングル「二人だけのセレモニー」のB面。A面の「二人だけのセレモニー」は、(作詞:夏目純/作曲:尾崎亜美/編曲:松任谷正隆)という組み合わせだ。岡田はデビュー1年目に竹内まりや、2年目に尾崎亜美と女性シンガーソングライターを起用、編曲にも松任谷正隆を起用し、当時の“ニューミュージック”的な世界をアイドルに投影した。対するB面の「PRIVATE RED」は、(作詞:売野雅勇/作曲:山川恵津子/編曲:大村雅朗)で、彼女には珍しいマイナー調のアップテンポ。作詞家・売野雅勇を起用したのも本作のみで、本流にはない挑戦的な作品と言えそうだ。「二人だけのセレモニー」は当時、オリコン最高4位、累計14.7万枚を記録。

 ‘24年7月末時点のSpotifyでの再生回数は「二人だけのセレモニー」70万回に対し「PRIVATE RED」が35万回で、サブスクでもA面優勢だが、海外だけで見ると「二人だけのセレモニー」が35万回、「PRIVATE RED」が30万回で、ほぼ互角となっている。特に、「PRIVATE RED」の海外比率は8割以上だ。

「僕は、A面の『二人だけのセレモニー』のほうが大・大・大好きですね。20年以上日本に住んでいるので、日本人の感覚になったのかもしれませんが、好きな箇所がいっぱいあるんですよ。具体的には、アレンジが当時としても相当に斬新だし、サビになると、テンポもコードもガラッと変わって、とてもワクワクさせられます。この2曲のギャップはとても大きくて、岡田有希子さんの多才さがよく分かります。

 B面の『PRIVATE RED』 が海外で人気なのは…ひょっとすると、イントロがミステリアスに聴こえるからかも。ちょっと外れますが、山口百恵さんの『イミテイション・ゴールド』もミステリアスなイントロが効果的です。海外では、こういったイントロはほとんどないので、曲が始まった途端、“日本の音楽を聴いている”というエキゾチックな感じが溢れるんじゃないでしょうか。メロディーも、洋楽では考えられないほどユニークですし、タイトルも“Futaridakeno Ceremony”と表示されるより、“PRIVATE RED”のほうが海外リスナーはアクセスしやすいのかもしれませんね」

 岡田有希子も、多くの楽曲で海外での比率が総じて高い。彼女の場合、竹内まりやや尾崎亜美など、海外でもシティ・ポップ・ブームに乗って人気のシンガーソングライターからの楽曲提供が多いということも影響しているのだろうか。

「確かに、海外ではシンガーソングライターの作品のほうが格上だと考えられている傾向があります。僕は、ベストな歌手とベストな作家の絶妙なコンビネーションがあってこそ魔法が生まれると思うので、まったく賛成はしませんが。

 でも、そういう情報がなくても、岡田有希子さんの声を聴いた瞬間、とっても明るくて、とっても可愛いなと感じました。さらに聴いていると、歌もうまい。声に癒しの要素、キラキラ要素がどちらもあって、彼女も海外にはなかなかいない存在ですね。

 ただ、海外の人は日本の女性アイドルの声をそこまで聴き分けられていない可能性もあります。今回の5人も、海外のシンガーとはあまりに異なっているんですよ。だから、早見優さんが好きな人は岡田有希子さんも好きだと思いますよ。それで、聴き込んでみて、ようやく区別できて、その歌声の魅力の差が面白くてさらにハマってファンになる。それくらい日本の歌手は斬新なんですよ!」

 マーティの話を聞いていると、昭和アイドルならではの、キュートでありつつ、うまく歌おうと懸命な歌声が世界的にとてもユニークな存在であると気づかされ、これまで知っていたアイドル歌手の楽曲も、改めてじっくり聴いてみたいと思えてくる。

 インタビュー後編では、昭和から平成初期に大ヒットを飛ばした工藤静香とWinkの「B面」曲について掘り下げてみたい。

(取材・文:人と音楽を繋げたい音楽マーケッター・臼井孝)

【INFORMATION】
マーティ・フリードマン 『ドラマ―軌跡―』
(収録曲一覧)
1.イルミネーション
2.ソング・フォー・アン・エターナル・チャイルド
3.トライアンフ(オフィシャル・ヴァージョン)
4.スリル・シティ
5.ディープ・エンド
6.デッド・オヴ・ウィンター
7.ミラージュ
8.ア・プレイヤー
9.アカペラ
10.ティアフル・コンフェッション
11.アイシクルズ
12.2レベルデス(デッド・オヴ・ウィンター)(スパニッシュ・ヴァージョン)
13.ミラージュ(ギター・カラオケ・ヴァージョン)

LIVE 2024「DRAMA Volume 2」
【開催日】8月24日(土)
[1st.show]開場15時30分/開演16時30分
[2nd.show]開場18時30分/開演19時30分
【会場】東京・丸の内ライブレストラン「COTTON CLUB」

マーティ・フリードマン
ギタリスト、作曲家、プロデューサー。アメリカのワシントンD.C出身。1990年にヘヴィメタル・バンドのMEGADEATHに加入し、ギタリストとして活躍。同バンド脱退後の‘04年に日本に移住し、以降、J-POPへの楽曲提供やギター演奏への参加、J-POP評論、さらにはTVや映画への出演など多面的に活動中。‘23年2月には、日本武道館にて24年ぶりにMEGADEATHと共演。‘24年5月、4年ぶりとなる本人名義のアルバム『ドラマ -軌跡- 』を発表。8月24日には、リリース記念ライヴの追加公演を東京・COTTON CLUBにて開催。

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

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